第61回
「食事前/直後の人、読むの禁止でヨロシク」
最近風が心地よいので、毎日毎日炎天下の中、
自転車であちこち出かけており、
もはや、自転車1時間は「近距離」の域に入った ニホンコンです。
先日訪れたカフェでは、金魚さんも、涼しげに泳いでおりました。
ことしは暑くなりそうです。
さて、旅話に戻りますと、
前回の列車の旅2日目
で、
「水道の水が、でない」ことが判明したニホンコン。
こんなもの、人の生死に関わったニホンコンにとっては、トラブルの何にでもなかった。
と、思っていた・・
前回お話した通り、中華人民共和国の火車で、こういう目に遭うと、
どうなるかというと、まず始めに歯磨きに困難をきたす。
で、お次は水を大量に使う洗顔はどーすんだ?という問題にぶちあたる。
これも、限りあるミネラルウォーターで、とりあえずぬぐうだけ。
ま、いいんですよ。
顔は洗わなくても「死なない」ので。
ニホンコンの衛生面でのエーカゲンさは、
こういう局面で「清潔」のスイッチを切っていたところからきているのだと思う。
きれい好きの方は、是非とも飛行機に乗ることを薦めます。
飛行機に乗ってしまえば数時間で着くのだから。(だったら自分も乗ればよかったと大後悔)
そして、2日目以降、トイレの状態が思わしくない。
すごい混雑と、つまってなかなか流れない、というダブルパンチ。
こうなると、中国人はどうするか、というと。
(ある親子のやりとり)
子「おかーさん!順番まだ?僕もう我慢できないよー!」
母「もう少しよ!我慢なさいよ!」
子「無理だよー、モレちゃうよー!シャーーーーーーーッ」
・ ・・・といって、シャーーーーーーッの先を見ると、
それは通路脇にある細長いゴミ箱の中。ガ・ガーン!
こんなことが許されていいのだろうか?
確かに、さっきから黙ってみてりゃ、中国人、やたらマナーが悪い。
食べ物のゴミは下に捨てるし、
(定期的にモップのオジサンが来るから、いいとのこと、
ただ、そのモップが牛乳の腐ったような臭いがするので、できれば来て欲しくナイ)
お弁当(人民はせっせと90円くらいのお弁当を食べる)
のゴミは、よいしょっ、と窓から放ってしまうのである。
「窓からゴミを捨てるのはイケナイことなんだよ!!」と、
ニホンコン、正義感イッパイで怒ると、
「大丈夫、それは土になり、肥料となり、また新しい木になるのだから」と
あっさり言われてオシマイ。
どう考えても、あの発泡スチロールの弁当パックが土にかえり、
新しい命を芽吹くなんて、聞いたことないし見たこともない!
しかも、学校では習わなかった。
弁当パックが肥料になることも、
「ゴミ箱にオシッコをしてはいけません」なぞとも。
ヨロヨロと、この人たちの常識を疑いながら、
グッタリしながら床につこうにも、真っ昼間はまた朝とは違う
人民が強烈なニオイのカップラーメンをモグモグ、
きゅうりをムシャムシャと、ほぼ家状態。もはやニホンコンの居場所ゼロ。
これは車掌室ですが、イス兼ベットの狭さや細さは同じ、
これが3段になっているのです
頼みこんで、上層を取った友人に変わってもらい、しばし眠りにつくことに。
あああー、どうしようー、どうしようー。
「このまま眠って、起きたら目的地に着いていたら・・」と何度思ったことか。
現実は、寝ても覚めても線路はつづくよどこまでも、でした。
そんなこんなで、2日目がすぎた。
そして、3日目。
「乗客の皆様にご連絡します。トイレの水が出なくなりました」
横の中国人のオバサンに訳してもらう。
こういう時には役に立つので、周りとは仲良くしておいて正解と思う。
(但、この代価は相当なもんだが)
そして、このアナウンスを聞いたときに
「最後までトイレは我慢しよ!」と思えるほど、
目的地までは近くない。多分道中半ばくらいだろうか。
水は控えめにしながら過ごそうにも、向かう目的地は、
中国西部はタクラマカン砂漠。車内も心なしか乾いた空気に見舞われる。
どうしても体からグングン水分が抜けていき、水分補給は間逃れない。
仕方ない、「4日目に1回だけ」と決めて、トイレを覚悟する。
そして4日目。
ここで行っとかんと!と腹を決め、重い体と足取りで、お手洗いに向かう。
(あ、ここでお断りしておきますが、向かった先は悲惨なので、
食事前の方、またカレーを食べてる方は本当にご遠慮ください)
で、意を決してドアを開けたんですよ。
「ク、クサーーーーッ!!」
と。思うより早く
「イ、 痛ッ!!」
なんと、あまりの臭さで「目が痛い」んですよ。
ワタシ、コンナノ、ハジメテ、アルネ。
なんていうんでしょうか、くさい → つーんとする →
そのつーんが2日間窓なしの密閉状態で醸造 →
つーんが強くなる→ 目に刺激 → イタタタタ、か?
いずれにせよ、笑えない。私、そのときに思いました。
椎名誠氏が書いた「ロシアにおけるニタリノフの便座について」という、
便座がないトイレの悲惨な話を読んだことがあるが、
それと同等か、それ以上の状態はまぎれもなく目の前にある「コレだ」と。
そこには、もう溢れんばかりのモノたちがタップタプしており、
電車がガタンゴトンと揺れるたびにあっちへタプタプ、
こっちへタプタプするのである。
「ここに、入れってか?」
一旦ドアを閉め、しばし考える。
そのとき、我が記憶に蘇る、「ゴミ箱に用を足した少年」
は正しかったのかもしれない、と気持ちはすっかり中国人。
そうすると、「ゴミ箱」か「タプタプ」かどちらかしか残ってないのだが、
ハタチを過ぎた女子が用を足す際、人様の前で良いのか否かで、ほぼ選択の余地なし。
ニホンコン、突入前にドアのこちらで、一度大きく深呼吸。
それからせーので、飛び込むことにする。
そして「せーの」で「つーん!」に飛び込んでいきました。
その「つーん地獄」の中では・・
「つま先で立つように、つま先で・・」と、
どうせタプタプに呑まれるのであれば被害は少ないようにと心がける。
また、鼻から息を吸い込むと、それこそ付け根から曲がりそうなので、
「口で呼吸を、口で・・・」と思ってる間につーんを吸い込み、
何度もオエオエし、涙目でぐじゃぐじゃになりながら、
人生最臭であろうトイレを後にすることができた。
思い出してもオエーなのだが、多分、人生の中で一番クサかった瞬間は、
ここに凝縮されていると言える。
「いやいやいや、全くひどかったよ、ここのトイレはー」
と、地獄の底から生還し、無敵になったような気持ちのニホンコンは、
我が席であろう人々の座っている真ん中をグイグイ陣取り、
「ココ、私の席だもんね!」とばかりにどっかり腰を降ろす。
横のオバサンやオジサンも
「いやー、あれはひどかったね」と、周囲も同意。
あらら、床にポイ〜、窓からポイ〜の人民たちも、
このトイレをヒドイと思ってるのね、と、妙に納得。
彼らの衛生観念でどこまでがNGでどこからがOKかが分からないが、
互いに何か同士のようなものが芽生えたようで、最後の日の夜は平和に更けようとしていた。
ニホンコンの汽車の旅〜北京ムウルムチ間〜はこんな様子でした。
また辺境まで旅をしたいと思いながらも、これを考えると旅ゴコロ萎えるこの頃です。
7月6日 坂下日本/香港
来週は、ちょっとニホンコンの近況をお知らせしようと思いますので、
ヒドカッタ旅記録はお休みします。
Kaori Sakashita
Presents [ サカシタニホンコン ]
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