第60回 「アナタノ オトウサンノ」
先週末、実家である静岡県浜松市に戻りました。
(あ、一応人の子ですので、小さな市で生まれ、育っていたのです)
姉のお琴のリサイタルがあり、写真を撮りにいきました。
そう、思い出したようにお話しますと、
ニホンコンのお家は昔からお琴を教えておりまして
今は「父と姉」という体制で続いております。
ニホンコンもコウコウセイくらいまでは一応習っておりましたが、
父から譲り受ける筈の「お琴の遺伝子」が姉にすべて渡ってしまったことに気づく。
さっさと見切りをつけ(つけられ?)、出来損ないの次女は不良と化し、
結果、親も追って来れないような中国の奥地へ飛び出す顛末となりました。
さて、飛び出した先の中華人民共和国でのシルクロードの旅。
電車の中は、このような感じでした。
汽車に乗り込んだニホンコン、乗って半日でもうギブアップ。
モンゴルなんてのは、事件を除けば余裕。道中ものらりくらりとしてて、
牧歌的で。
ただ、この列車はスゴかった。中国を凝縮して1両につめたような感じ。
窓から見えるのんびりした景色は「わー、楽しー」なんてのは2時間も経てばお腹イッパイ。
あとは唸るほどヒマな何十時間が待っているのみ。
(黄河:蘭州という町から見えた黄河。地図上で見ていたあの河が!と思ったものの、
色はすっかりドブ河です。ちなみに黄河の魚「黄魚」というのは、貴重だけどオイシイらしい)
車内では、早朝から人がおりてきて「人民との交流会」が始まる。
寝てる間もなく、大声であれ食べろやこれ食べろやと。
ニホンコンも朝っぱらからでっかいザーサイとかを食べさせられ
(しかもザーサイだけ、ご飯ちょうだいよ!)、
パサパサのクラッカーやら干し梅やら、
口の中が何味かわかんなくなるような強烈なモノたちを押し込められました。
そういった集団の場合、「日本人」というニホンコンは、格好の餌食にされる。
中国人とオシャベリをすると必ず聞かれるのは、これだ。
「アナタノ オトウサンノ キュウリョウハ イクラ?」
ちょっと待ってよ。父親の給料なんて見たコトもなけれは、聞いたコトもない。
みんな、日本て国が、近くて、遠くて、金持ちの国だと思っているらしい。
そりゃそうだ。ここにいる周りの中国人の1ヶ月の「月収」が、日本円で「1万円」くらいなのだから。
「さあー、知らないのよねー」と答えると、
中国人は、こう来る。
「ソレジャ、ダイガクソツノ、キュウリョウハ、イクラ?」
新卒で働いた場合、初任給はいくらかと聞いているのだが、
これはおおよその目安があったりして、ニホンコンも少しは分かった。
「税金とかは知らないけど、15万くらいヨ」なんて答えた暁には、
もう驚愕と、そして羨望と、果てまた嫉妬の嵐が巻き起こり、
皆の衆の視線が矢のようにつきささるのを、ニホンコンは痛く、受け止めていた。
「あ、いやね、それはさ・・、その国の物価とか、あるじゃん!
あとはさ・・家賃とか税金も高いので、結局残らないワケよ・・・」と必死の弁護。
無駄だが。
(なんで私がこんなヤな思いしなきゃならんのよ!)と思いながらも、
お金の話は金輪際しないことに決め、それから数々の「イクラデスカ?」攻撃にあったときには
「父親の月収は、1000元(日本円で2万弱)です」というようにしている。
んなワケないのはバレバレなのだが、正直に答えてたら、我が身が危険。
オトウサン、嘘つきな娘に育ち、スイマセン。
それからは、日本の歌を歌えとか、
今でもアイドルだと思われている山口百恵のリクエストが来たりなど、
質問なのか強制なのかよくわからない押しつけに答えながらも、
「とりあえずヒマつぶし」をしながらコトコト進む。
そう、コトコトと、で思い出したのですが、「ナゼ4泊5日もかかるか」。
それは、中国大陸がデカイという以前に、この汽車が遅すぎることが判明。
窓を見ていると、遠くのトラックが我々の「4泊5日火車」
を追い抜かしていくという衝撃の瞬間を何度も見てしまった。
汽車はそんなニホンコンを無視するかのように、
相も変わらぬ速度でコトコトと走っていく。
そして、悲劇の始まりは、その夜に起こる。
「水道の水が、でない」
そのときは、それがどういうことか分からなかった。
そして、幸いにも持っていたミネラルウォーターで、歯を磨く。
でも、まだ2日目。あとの残りはどうなるんだ?と一抹の不安を抱えながら、
途中で水補給ができるものだと「日本的」に考えてしまい、ぐっすり眠る。
しかし、残念ながら、ここは日本ではなく「中華人民共和国」だったのだ。
(風車:窓から見える景色、風力発電の風車で、一瞬「ワー!」となりますが、ずっとこれが続きます)
6月29日 坂下日本/香港
Kaori Sakashita
Presents [ サカシタニホンコン ]
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