第16回
歯 の「ハナシ」【其の参】
なんだか歯の話題ばかりしているのと
歯医者ばかり通っているので
サカシタニホンコンが
「サカシタ『ハ』ホンコン」になりやしないかと不安になっている このごろ。
さて、
前回
は中国の奥地で歯がズッキーンと痛み、中国人家族を説得したニホンコン。
翌朝ハタと自分の居場所とそこの衛生状況をよく考えたら、
恐ろしい選択肢しか残っていなかった、ところまで話したと思う。
結論からいうと、こうだ。
「町では一番大きいと言われる総合病院の歯科に行った」のだ。
「一番大きい」「総合病院」と聞いて、とりあえずあるもののベストだ、と喜んだのもつかの間。
もう、それがすごい建物なんですわ。
色でいうと、灰色。
いうなれば「廃墟寸前の団地」でしょうか。
総合病院だから、内科小児科整形外科も一緒の受付。
並ばない中国人にまぎれて、われ先にと、受付を済ます。
いや、済まないのねこれが。
中国を電車で旅する時に必ず陥る「切符の窓口地獄」
これと、全く同じなのだ。
ただ、目的が移動か診察かの違い。
山のような中国人が、小さな受付窓に、われ先にと、押し合い、へし合いするのだ。
外国人の私なんかは、すぐに弾き飛ばされてしまうところが、
中国人の友達が一緒にいたおかげで、すこしはスムーズだった。
彼女が「私が先よ!」とか「横入りしないで!」と制すだけだったが、威力があった。
ただ、中国人の彼女でも、並んで順番を待つことにこれだけ苦労するのだから、
電車での苦労は外国人の私だけじゃないのね、と妙に納得もしてみるが。
で、無愛想な受付嬢にピッと紙切れを渡され、待つこと数時間。
診察室に呼ばれた私は、ひっくり返りそうになりました。
「ひえ〜〜〜!!キタナイ〜〜〜!!!」
それはもう、見たことのない、診察室。
確かその1ヶ月前にモンゴルに行った時に、急性アルコール中毒になった友人が運び込まれた、
町の小さなお医者さんも流石に汚かったが、あんなもんは甘かった。
その状況を説明するならば、見たことはないけど、
映画や写真などで見たことがある、戦時中の病院みたいなのね。
破れた診察イス
古びた機械一式
何十年も手入れしていないような、水まわり
しかも、うがい用コップは、割れたプラスチックの容器。
あそこで「グブグブ ペッ」をすると思うと、背筋が凍る。
「だ、騙された」
いや、騙してはいないのだ みんな。
純粋に私のオーダーに従ってくれただけなのだ。
その瞬間、自分の何がいけなくて、今ここにいるのか、数カ月の記憶を巻き戻してみた。
あの時、外資系の高額歯医者さんを選択せずに、あきらめて現地の歯医者さんに行けば良かったか。
あの時、無理してでも残りの700ドルを払っておけばよかったのか。
あの夜、少し我慢して、田舎町で歯医者に行くのをやめ、
夏休みを終了後に北京に戻ればよかったのか。
もはや「中国で治療を受ける」ことを選択した自分は、
ここがベストの地ではないことを、体全体で感じていた。
私に残された道はただ1つ
1、「自分だけは大丈夫」の気持ちで、何も病気がうつらないことを祈る「のみ」
で、受けましたよ、診察を。
治療の経過は、はっきりいって覚えていないが唯一、
そこの汚いコップを使って「グブグブ ペッ」をしたのだけは覚えている。
銀色の詰め物をしてもらい、無事診察は終了。
お会計は、確か10元くらい(1元は当時15円なので、150円)
その後、、、
別に具合が悪くなったわけでもなく、
変な病気をもらったわけでもなく
いたって順調だったニホンコン。
人生最悪の衛生状況の中、歯の治療を受けても無事だった自分にすっかり自信がつく。
そして、夏休み終了後は元気よく北京の地元の歯医者に通ったのだ。
ただ、最近のSARS騒ぎで、とある北京の病院で「患者がいない」
とうそぶいて事件になった病院があったが。
その映像を見てびっくり!
どこかで見た懐かしい映像。
そう、それはサカシタニホンコンが北京でお世話になっていた、まさにその病院だったからだ。
確かに、私が治療した時も怪しかったなあ、と、今さらになって思う。
ここでの治療の「ハナシ」は、また今度。
これは別の田舎町、何もなさは私が治療を受けた町と同じくらい
7月22日 サカシタニホンコン
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