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伊豆の謎美術館 | ![]() |
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あいだ開きましたが、伊豆旅行の話、まだやります。覚えてますか?ロマンスカーの話。忘れた方は復習しましょう。そしてお友達にも紹介して、お友達も綺麗にしましょう。by岸田今日子(わかるかなー、、、)。 ロマンスカーにしっかりと現実を見せられたのち、浮かれてばかりいられないと気を取り直した僕たちの前に、次なる電車がやってきた。その名は「リゾート21」。完全なリゾート仕様。だって座席が全部窓を向いているんだもの。簡単に言えば、都会の電車の逆ね、逆。みんな背中合わせに座るんだ。すごいよねー。よく考えればさ、中に入る人数変わらないんだから、山手線とかもそうすれば楽しいのにね。座席のない車両なんて作んないでさ。あれ、まるでどっかに護送されてるみたいだからね。朝からなんだか犯罪者気分満喫。くさい飯でもがんばるぞ!ってな感じだよ。でもさ、いまどき護送車でも座席あるよね。戦前かっつーの!あーあ、都会はやだね。だから伊豆に旅行なんだけどね。 で、その素敵な名前の電車に乗ろうと、せっかくだから前の方に乗ろうと、一番前の車両に向かうと、そこはリゾート演出てんこ盛り!なんと座席が段になってる!わかり易く言うと、映画館みたいな、階段教室みたいな感じになっている。運転席がガラス張りで、車両の窓もとても広い。完全に浮かれてしまいました。わけもなくデジカメで景色撮ったりね、ムービーモード使ったりね、もう浮かれちゃいました。そんな浮かれまくりの僕たちにも伊豆急行は寛大で、なんの罠も仕掛けずに目的地の伊豆高原まで連れていってくれた。やっぱ、違うよね!でここから宿まではバス。免許ないからね。 宿ではのんびりしましたよ。温泉はいったり、朝からテニスしたりね。思い描いたリゾートライフ。どうだ!ってなもんです。免許ないけどね。で、次の日。伊東へバスで向かう途中(免許がない為)、湖のほとりでお茶でも飲むかと降りた、湖入り口バス停の目の前にその美術館はありました。やっとタイトルの美術館登場です。 伊東美術館。浮世絵と書いてありますが、、、入り口には日本国総理大臣、自民党党首、小泉純一朗のポスターがパズルの額(ひび入り)に入って展示してある。すばらしいセンスだ。キュレーターのセンス大爆発です。日本国の代表である総理大臣のポスター写真を安いパズルの額に入れるだけでなく、ひびまで入れることで、この国のもろさ、軽率さを表現するとは、複写の技法を使ったウォーホールもびっくりです。ここで僕は気が付いた。ここは浮世絵美術館じゃない、現代、または近代美術の思想を伝える美術館だと言うことに。そう、だって中を覗いても、浮世絵ないんだもの。いや違う、きっと昔は沢山あったのだろう。でもキュレーター(おじさんともいう)の美術思想が変わり現代美術の思想を伝えることに徹しているのだろう。中でもこの美術館は、美術館の存在意義についての考察がメインとなっているようだ。館内にはラジカセやテレビ、漬物がつかってそうなつぼ、電子レンジなど、生活のなかにあるあらゆるものが、ところ狭しと展示されている。その雑然とした光景といったら、マルセルデュシャンの作品が表した、レディメイドの美しさと、そのものが、置かれることによって意味を持つ、美術館の存在意義、などを遥かにこえ、生活に溢れるものすべてが、いやこの世界すべてが美しいと言わんばかりだ。すばらしいよ。こんな山奥で、なんて前衛的な美術館。まいったよ。あっぱれだよ。そんなことを思いながら、僕らは恐る恐る、外から館内を眺めていた。さて外の展示も見終わったし、中に入る勇気もないし、バス停に戻るかと思ったその時だった。突然、パフォーマンスがはじまった、一人の男が「ちょっと、ちょっと、ねえ。ちょっと」と叫びながら館内に入ってゆく。まるで狂人のように、大声で、身体のすべてを使って「ねえ、ちょっと」と何度も何度も叫んでいる。寺山の天井桟敷的な、60年代のハプニング的な、またしても前衛的な表現。中に、誰かいるのかどうなのかもわからない空間で「ねえ、ちょっと」と叫び続ける。雑然とした空間の中でそれは、まるで人間だけがエゴであると言わんばかりだ。 伊東美術館。セゾン美術館が消えた今、日本の前衛を担うのはここかも知れない。 chida |
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Mar.27.2003 |