沖縄



10月7日(土) 晴れ
台風過ぎて晴天。朝ごはん食べ、9時に出発。空港までの電車、うんざり。
飛行機は満席。沖縄に向かう人たちは早くも半袖。飛行時間、2時間ちょっ
と。やっぱり、あたたかい。空がまだ夏の空。早速、レンタカーに乗りこみ
走り出す。とはいっても、沖縄にやってきた感じがまだ全然しない。おなか
ペコペコで、とにかく食堂を探して入った。もう3時。夫はソーキそば、私
はゆし豆腐定食(刺身、目玉焼きつき)を注文した。ここでやっと沖縄に来
た気分になってきた。食堂には私ら夫婦と、オッサンがふたり。ふたりとも、
屈強な沖縄男という感じ。真っ黒に日焼けして、短パン、Tシャツ、ビーサ
ン姿。体つきはたのもしいが、おなかはでっぷり。寝癖ボサボサ頭で、モリ
モリ食べている。夫のソーキはポロッと骨から身がとれて、やわらかい骨は
ぽりぽり噛み砕けるくらいよく煮てある。ゆし豆腐はやさしかった。後片付
けはお店の子供が、楽しそうにやっている。
南部へ向かう。私は車の中から、外を歩く人の顔ばかりみていた。一般的な
日本人の顔とはちがった、琉球人の顔。見ればみるほど異国人に見えてしま
う。まえに沖縄に来たときは北へと向かったが、そのときの景色とは全然違
う。家、お店、畑、独特なお墓、坂道、曲がり道。高台から濃い青い海が見
えたと思ったら、あっという間に、海の前の宿に着いた。中に入るが、誰も
いない。奥の部屋で、じいさんが座ってテレビを見ているが、気づかない。
困ってたらお兄ちゃんが現れて、名前だけ聞いて、部屋の鍵をくれた。説明
も案内もない。2階の部屋からは海が見える。波の音がザーッと聞こえるく
らい近い。散歩に行くでもなく、ふたりとも夕飯までぐっすり寝る。夕方、
「明日は村の運動会です。皆さんふるって参加しましょう。」と放送があっ
た。
初日は宿での夕飯。宿のおばちゃん、私たちが座敷の方を見ていると、「カ
ウンターに座りなさい」と無理強いした。座敷だとめんどくさいから。はじ
めて会う私たちに、さっきまでカウンターに座っていた別のお客さんの悪口
を言う。今日来たばかりの私たちのことには全く興味がない様子。何泊する
かも知らないし、どこから来たかも聞かないし、沖縄のことをあれこれ教え
てくれるでもない。ただ、自分のところがやっているガラスボートに乗れと
何度も言う。うちのに乗ったら割引する。よそのに乗ったらもめると言う。
最近は朝晩とても涼しくなったので、風邪ひきぎみらしい。でも別に、イヤ
な感じの人ではない。
夕飯は、パパイヤのサラダ、マグロの刺身、ゴーヤチャンプルー、焼き魚(タ
カサゴ:沖縄の県魚、グルクンのこと)、ごはん、味噌汁。昼ごはんが遅か
ったのでおなかはハレツ寸前。
夜、夫がビールを買いに下りたら、お兄ちゃんがタダでくれた。夫はビール
片手に、宿にあったマンガに夢中。
外は街灯がほとんどない。でも月明かりが強すぎて、星も見えない。昨夜の
東京の十五夜は、雨で月が見えなかった。今晩は、沖縄で海の上のまんまる
の月が見える。








10月8日(日) 快晴
快晴。すずめの声。8時半から座敷で朝食。客は私たちの他に、おじさんひ
とり、家族連れ、女4人連れ。シークワーサージュース、トースト、サラダ
(ゴーヤ入り)、卵、スパム。座敷に入る風が気持ちいい。浜辺を散歩した。
波はおだやか、ターコイズブルーの海。朝っぱらから泳いでいる人がいる。
ガラスボートは早くも営業中。朝から陽ざしで皮膚がピリピリした。
部屋に戻って、とりあえずの行き先を決めて出る。今日は車で30分範囲し
か動かない。琉球ガラス村、サーッと見ただけ。ひめゆりの塔、行きたい夫
についていくだけのつもりだったが、行ってよかったと思う。知らない沖縄。
私は中学生のときに来たことがあったが、そのときの記憶よりずっとリアル
で深いところだった。
土産物屋でパイナップルのアイスを買って、駐車場に座って食べた。
サーフィンをしたいので、サーフショップに寄っていろいろ聞いた。
地元のスーパー寄って、いろいろ買う。オリオンビール、乾燥パパイヤ、う
っちん茶、ドラゴンフルーツ、など。
お昼、もずくそばを食べに本島と地続きの奥武島へ行く。もずくそば、もず
くの天ぷら、もずく酢、もずくゼリーともずくづくし。このお店、流行って
いる。外の大きな木の下の席で、地元の家族がそばをすすっているのを見て、
羨ましくなる。店の前は真っ青緑の海。奥武島の入り口には、海鮮食堂や天
ぷらやがある。どこもとても流行っていて、車がいっぱい、行列。私たちは
もずくでおなかいっぱいなので仕方なく素通り。この島は、車で1周5分く
らいの小さい島。島の反対側で車を止めて、海に下りた。黒い珊瑚のデコボ
コを歩いて魚やナマコを見た。こういうとき、夫は私をほったらかし。気が
つくと米粒くらいに見える遠いところにいる。ここの海はさらにすごい色。
宿に戻り、ふたりとも実は頭がイタイと告白しあう。熱射病。同じ症状。冷
房をかけて、夕方まで寝た。それでも頭はまだ少し痛い。夕方、気晴らしに
近くの茶屋に行ってみる。夫はビール、私はアイスティーとスコーン。ここ
は目下、海。地元のデート客も多い。ちょうど、夕暮れ時で久々に日が沈む
のを見た。あっという間に沈んだ。特に今日の夕日は美しかったようで、お
店の人も写真を撮っていた。宿に戻って、夕飯にいいお店を聞く。気になる
山羊料理を出すお店。この旅の少ない目的のひとつは山羊を食べること。地
元の人しかいないような、何でもありの居酒屋に着いた。売りは牛汁らしい。
その他、馬汁、アヒル汁などある。山羊は刺身がなく、山羊汁しかなかった。
その他、牛刺、ヘチマ煮など注文。牛刺、意外とさっぱりでおいしいが、て
んこ盛り。玉ねぎと生姜醤油でいただく。生肉をこんなに食べるとは、獣に
なった気分。山羊汁、全てが強烈。口の中にいつまでも脂の膜がはっている
くらい脂っぽい。申し訳ないが、味もにおいも辛いくらい。精力満点になる
どころか、夜にふたりともおなかが痛くなる。山羊の見方が変わってしまう。








10月9日(月) 晴れ
サーフィンに行くので6時半起き。おなか痛もあたま痛も治った。朝早いの
で朝食は断ったので、部屋であんぱんとヤクルト。水着を着て出掛ける。朝
は車があまりいないのに、たまたま前を走った車が遅いのなんので、ギリギ
リ遅刻でサーフショップに着く。誰もいない。来ない。夫の留守電に伝言が
あり、聞くが何を言ってるのかさっぱり分からない。何度も何度も聞いてや
っと、「波が悪く、スミマセン、キャンセル」が聞き取れた。がっかり。と
りあえず宿に戻る。宿泊客は私たちだけになったみたいで、食堂は誰もおら
ずしんとしていた。やはり沖縄でサーフィンは難しい。予定を練り直して、
街の市場へ行くことにした。相変わらず強烈な市場。肉がすごい。豚の顔、
豚足が並んでいる。ナタをふりおろして、骨を断ち切るおばあ。目の前を人
が通る。包丁で頭を掻いているおばちゃんもいた。市場では島らっきょうだ
け買う。お昼は夫の要望でステーキハウスでステーキとビール。昨夜、あん
なに牛肉を食べ、山羊におなかをやられたたわりに食べる。赤身でもとても
やわらかかった。沖縄の焼物の壺屋焼の工房やお店が並ぶ、石畳のやちむん
通りを歩く。シーサーがいっぱい並んでいた。路地を入ると、一昔前の沖縄
の雰囲気のある小道。静か。民芸店で壺屋焼のお皿やお茶碗を買って帰る。
私が見つけた夫のお茶碗は、とてもかっこいい。土産物屋で、夫が欲しい4
3度もある泡盛の試飲をした(夫にさせられた。夫は運転手なので。)せい
で、私は顔が真っ赤になり、フラフラになった。
夕方、ビーチでのんびりしようと帰ってきたら、宿の玄関に鍵がかかってい
て入れない。おばちゃんは、昼間は少し離れたところにある海の家にいると
いっていたので、歩いて行く。「あら、うちのおじいが閉めちゃったのね〜。
勝手口はあいてるんだけど〜。」とおばちゃん。せっかくなんで、ガラスボ
ートに乗る。おわびにタダで貸切で乗せてくれると言っている。おばちゃん
はサーフィンができなかったのを聞いて、「あの人に聞きなさい。あの人は
何でも知っている。あの人と仲良くしなさい。私といたら、恐縮して喋って
くれないから、向こうへ行って喋りなさい。」とガラスボートのお兄さんを
指さした。夫がお兄さんに、どこかでサーフィンできませんかと聞いてみる
が、「知らんなあ」と言われただけ。山羊を食べたことを話すと、急に盛り
上がって、おいしい沖縄そばのお店、眺めのいいお店を教えてくれた。
ガラスボートに乗る。夫は初めて。このビーチは珊瑚がいっぱいあって、漁
が禁止なので、浅瀬にも魚がたくさんいる。しかも寄ってくる。時々、餌を
やっているとのこと。沖に行っても、かなり浅いところがあり、お兄さんは
潮の流れを見て、座礁しないように船をあやつりながら魚の説明をしていた。
もう、どこらへんにどんな珊瑚があるのも知っていてすごいお兄さん。海の
色は沖へ行くほどどんどん青くなり、魚は色とりどり、鯛やカマスの群れも
いた。亀は残念ながらいなかった。途中、ボートは揺れて揺れてかなり気持
ち悪くなる。吐くかと思った。おばちゃんが言うには、今晩、那覇は祭りの
大見世物の大綱引きがあるらしい。陸上競技業では夜店がたくさんでて、花
火もあがると教えてくれたがとても動けそうにない。部屋にもどって、ふた
りともしばらくぐったり横になる。暗くなるまで。6時の放送、赤とんぼの
音楽、子供の声で「6時になりました。まだ遊んでいる子供は早く家に帰っ
て宿題をしましょう。大人は遊んでいる子供がいたら、早く帰るように言い
ましょう」。
夜、ボートのお兄さんが教えてくれた眺めのいいお店へ。今日は郷土料理を
ひとまずやめておいて、夫はチャーハン、私はシーフードカレー。これがま
たものすごいボリューム。私のカレーは、カレーなのにおいしくなかった。
眺めのいいお店といっても、夜は真っ暗なので、一面闇。昼間はものすごい
景色にちがいない。帰り、月明かりで海が銀色に光っているのが見えた。初
めて見る景色だった。部屋に帰って、チューハイを飲んだら、前後不覚にな
ってしまう。夫がフトンをかけてくれたのは覚えている。










10月10日(火) 晴れ
心配していた二日酔いなし。朝ごはんのときに、お兄ちゃんが、昨日行って
きた北部の島の話をしてくれた。沖縄本土の人が見て、離島にわざわざ行く
必要がないくらいキレイな海とのこと。珍しく興奮ぎみのお兄ちゃん。ギョ
ロ目をさらに飛び出して話している。新しく橋ができたので、島には車で行
けるとのこと。今日は前のビーチでのんびりしようと思っていたが、これを
聞いたら行かずにおれない。夫が早速地図を持ってきて、行き方を教えても
らう。そしてすぐに準備して向かう。お兄ちゃん、「とっとと行かないと、
夕飯に帰ってこれないぞ」。玄関前を掃除していたおじい、「昨日は鍵閉めて
もうてぐぉめんなあ。」と平謝り。日焼けしていて、強そうなおじい、意外
とヨボヨボ。朝の掃除が日課で、だいたいテレビの前にジーッと座っている。
高速に乗って1時間。高速でも、みんなゆっくり走る沖縄の車。名護市内を
走って海沿いの道に出る。海の色がどんどん嘘っぽく、鮮やかになっていく。
エメラルド色とターコイズ色と真っ青と薄い水色のまだら色。波もあまりな
い。国頭村、やんばるくいなの里。まず、比地の滝へ。北部に行ったら、海
以外にはここくらいしか行くところがないと言っていた。滝までは遊歩道が
あると聞いていた。確かに遊歩道、でも、絶えず上り下りの階段。山登りと
変わらない。ビーサンと短パンTシャツで行くところじゃない。いつビーサ
ンの鼻緒がとれるかとビクビク歩いた。でも、森の中はひんやりしていて、
見たことない虫や南国っぽい植物。猿か虫か分からない、ジャングルっぽい
鳴き声がずっと聞こえる。やっと、ほんとにやっと、滝に着いたときにはヒ
ザがワナワナ震えるくらい疲労。夫は滝壷にいちばん近い岩まで、また私を
ほったらかしてすっとんで行った。水に足を浸けたら、最高。飛び込みたい
気分。
帰り道はまだまし。蛇がでて急に怖くなる。
お昼に道の駅で夫はゴーヤチャンプル定食、私は沖縄そばを食べる。おやつ
に紅芋のサーターアンダーギーを買おうと味見をしていると、地元の子供に
「おいしい〜?」と話しかけられ、妙にドキッとした。
また海沿いを走って、古宇利島へ向かう。
今帰仁村の古宇利島へは海の上のふたつの橋を渡る。屋我地島への短い橋を
渡り、サトウキビ畑の島を抜けて、海の上の長い橋を渡る。橋の袂の両側が
ビーチになっていて、遊んでいる人がちらほら見えるが泳いでいるのは子供
くらい。他にひっそり泳げそうなところを探して、島に入ってみるが、あっ
という間に一周まわってきてしまった。車で水着に着替えて、浮き輪を借り
て、なりふりかまわず海へサブン。水ははじめ冷たかったが、入ってしまう
とあったかい。少し曇っていたが、太陽が出ると海の色がサーッと明るくな
った。しばらくプカプカ浮いていた。和む。海から上がって食べたサーター
アンダーギーはおいしかった。
帰りの車はずっと寝ていた。結局、私は一度も運転しなかった。
国際通りに寄って、さっとお土産を買って帰る。島バナナ、ちょっと高いが
日本一おいしいバナナらしい。今はまだ緑緑しているが、黄色くなるまで風
邪通しのよいところに吊っておいて、房から落ちそうになったら食べごろら
しい。楽しみ。
帰り道、またまた前の車がゆっくり。沖縄南部では、何度もゆっくりゆっく
りの車のうしろを走った。いかに自分たちが日ごろ急いでいるかが分かる。
最後の夜は、宿で夕飯。宿のお兄ちゃんが「肉大丈夫ですか?」と聞いてい
たので、てっきり、ラフテイやテビチの豚だと思っていたら、牛ステーキだ
った。あと、パパイヤの煮物(?)、スープ、ごはん。最後なんで、泡盛を
たのんだら、お手製のゴーヤのピクルスを出してくれた。おいしい。これは
あまり苦くない太いゴーヤで作っているとのこと。
肉ばっかり食べているので、自分が獣のにおいがする気がする。
部屋に帰って、ベランダで泡盛をちびちびしながら話す。帰りたくないなあ。










10月11日(水) 快晴のち曇り
6時半に目が覚めたので、ベランダに出て、まだ半分寝たまま朝日を見て
ボーーーッ。夫はぐっすりだったので、起こすのはやめる。
朝ごはんはいつもと同じ。スパムがソーセージに変わっただけ。ここ3日く
らいは、泊まっているのは私たちだけ。中日優勝のニュース、北朝鮮の核の
ニュースを見ながら、カウンターで食べる。お兄ちゃんが読んでいるのは沖
縄の新聞。荷造りだけして、ビーチを散歩。足だけ海に入る。今日は今まで
でいちばんいい天気。海もキラキラ光っている。帰る前におばちゃんに挨拶
する。気さくで、客に媚びず、自然体のおばちゃんだった。お客様気分とい
うより、ここに泊めてもらっているという気分だった。ベッドメイキングも
タオルの交換もない。ほったらかしで居心地よかった。おばちゃんもお兄ち
ゃんもおじいも、別に人懐っこく話しかけてきてくれるでもない。こちらか
ら何か聞いたときは、最低限プラスちょっとのことを教えてくれるくらい。
向こうから、こっちのことを色々聞いてくるでもない。沖縄の人は大らかで
明るくのんびり〜の印象はあるけれど、実はそれだけではない感じがした。
見えない一線ひかれているという感じがしたのが正直。
おばちゃんと写真を撮る。おばちゃんは顔もまだ洗っていないと言っていた。
ちょっと遠回り。海の見える道を通って空港に向かう。ガラスボートのお兄
さんに教えてもらったおいしい沖縄そば屋がちょうど帰り道だったので寄
る。お昼になったとたん、どんどん人が入ってくる。作業着の人、タクシー
の運転手、若者、家族連れ、観光客・・・・。カウンターにおいてある、ヨ
モギの葉を好きに入れて食べる。ちょっと細めの麺で、とてもおいしかった。
空港に着いたとたんに曇ってきた。







それでは、また再来週!


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