第172回「カエルの子はカエル」
ニホンコンの娘はニホンコンJr.
なのだが、ニホンコンを産んだ人、
「ニホンコン母」がいる。
その母がまたスゴイ。
大の旅好きな人で、万里の長城はもちろん、
エジプトのピラミッドから、ナスカの地上絵、
南アフリカの喜望峰やらリオのカーニバル。
果ては北欧のオーロラまで旅する、
「世界ふしぎ発見」を地でいくような人だ。
一生オンエアされることのない
オバハンのミステリーハンターだと
思ってもらえれば想像がつくかと思います。
ハイビジョンが投入された実家では
キレイな映像の旅番組を見ては
「待っててねー」とブラウン管に
向かって、ひとり話しかけている母。
実家の彼女の部屋には
各国のみやげ物で埋め尽くされており、
こっそり「民族博物館」と呼んでいる。
今朝、朝イチに洗濯物を干していたところ、
一本の電話が鳴った。
「グッドモーニーング!おかーさんだよ!」
確か今は旅行中と聞いていたので
もう日本に帰って来たのかと尋ねると
「違うよー!今『ウルムチ』にいるのよ!」
と、テンションと共に2オクターブくらい
高い声が電話の向こうから響いてきた。
【ウルムチ】とは、中国は
「新彊ウイグル自治区」の省都。
ニホンコンが中国留学中、
4日間のトイレ悪臭電車の末にたどり着いた、
シルクロードの果ての町だ。
また、思い起こせば20年ほど前、
この新彊ウイグル自治区の
「ウルムチ、トルファン、カシュガル」
の3都を自由旅行したいが為に、齢10歳の
ニホンコンを個人通訳に仕立てるべく、
中国語を習わせた、そのキッカケの町でもある。
いつか連れて行ってあげたいと思いながらも、
なかなか機会がなく、そうこうしているうちに、
ニホンコンが母になってしまったので
勝手に行くことを決めたのだろう。
「いやー、トイレはひどいね、汚いね!
まだニーハオトイレのほうがマシよ!」
(※ニーハオトイレ=ドアなしトイレ
用を足している人と待ってる人が
向かい合わせになり、挨拶ができることが
名前の由来)
「何故か向かい合わせになるようにしゃがむのが中国式」
母は、その大変さをむしろちょっと楽しんでるかの
ような声色で、旅の報告をしてくれた。
彼女の旅の嗜好は、
清潔、キレイで瀟酒な場所よりも
「バッチイところ」
なるほど、DNAとはよくできたもので、
じっとしない性格も、旅好きなところも、
行きたい場所の好みも本当によく似ている。
カエルの子はカエル、いや、
「カエルの親は親ガエル」なのだ。
彼女の遺伝子をそのまま受け継いだニホンコン。
当然我が娘にも、ニホンコンのお腹から
産まれて来た使命を全うしてもらうべく
「夏休みの自由研究は『インド』ですからねー」
と、今から訴えかけている。
カエルの子の子は孫カエル。
娘よ、どうかたくましく育ってくれ。
「カメラが珍しいらしく、歩いていたらこんだけのキッズがついてきていた」
9月26日 坂下日本/香港
SAKRA.JP - http://www.sakra.jp / Contact - mail@sakra.jp
All rights reserved by SAKRA.JP 2002-2006