第169回「三十路をすぎてから」
久々の助産院は、もう歓喜の悲鳴で
溢れており、同じ頃に産まれた赤ちゃんや
お母さん、なつかしの助産師さんにも再会でき、
さながら恩師に会いに来た卒業生の気分。
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さて、こんな穏やかで平和すぎるくらいの
ニホンコンの日常に、大学時代の友人からの一報は
天から雷が直撃したかと思うほど刺激的だった。
「今週末で会社を辞めて、来週からドバイに住みます」
ひ、ひえーっ!
石油王?砂漠?ペルシャ湾?
なんかそんなイメージしかないのだが。
ちなみによくよく調べてみると、ドバイは
全人口の2割しか現地人がおらず、殆どが
外国人で占められている大開発真っ最中の街。
しかも埋め立て地をショッピングモール化している
など、世界中の金と欲望が渦巻く観光地と変貌しつつある。
らしい。
早速久々に電話をしてみると、こうだ。
「ドバイの航空会社『エミレーツ航空』の
客室乗務員(スチュワーデス)に受かり、転職」
彼女のこれまで仕事は「秘書」
客室乗務員は全く経験無しなのだが、
昔からの夢だったのである。
「いやあさ、三十路だから未経験のことに
チャレンジするのも最後かなあと思ってさ」
その潔さがいいなあと思ったり。
彼女とは、学生時代に家賃1万5千円の
「フロトイレ共同の5畳アパート」の仲。
お互い口癖のように「広い世界を見たい」
といっては、朝方まで世界地図を見ながら
ああだこうだと語ったのも懐かしい。
かくして、見事に夢の一歩を
踏み出そうとしている彼女は
実にすがすがしかった。
客室乗務員というと華やかでたまらない
イメージが先行する中、彼女の場合、
なんといっても「中東の航空会社」
両腕にありとあらゆる予防接種を受けて
現地へ向かうようだ。
「ポリオでしょー、A、B型肝炎でしょー、
三種混合でしょー、あと破傷風は日本にないから
向こうに行ってから打つでしょー、あ、でもその前に
流れ弾に当たらないように気をつけないと」と。
あまりにも素敵すぎる。
ニホンコンなら毎日更新の
「坂下『中東』ニホンコン」を
展開させる筈だ。
最後に彼女が言っていたのは、
「別にね、絶対スチュワーデス!なワケではなくて。
アフリカには皮膚の黒い人がいて、
北欧には背が高くてブロンド青目の人がいて・・
それはその国の空港に降り立つだけでも味わえて
ドキドキするもんなのよ。
ただ、それが見たいだけなのね」
そんなピュアな欲望を果たそうと
思い切った挑戦をした彼女に、感服。
「LAの空港」
いつか彼女のドバイライフを
坂下ニホンコンで紹介したいものだ。
「こんな太った人が普通サイズのLA、カルチャーショック」
「激甘サンデーを5分くらいで食すカップル、カルチャーショック」
9月05日 坂下日本/香港
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