先日放送されたリンカーンで、とても印象深い話を聞いたので紹介しようと思う。
それは芸人達を泣かせようと企画されたもので、癒しのエピソードとして紹介された。
中川家・剛のエピソード
僕には兄のような弟がいる。
そんな弟を「芸人になろう」と誘ってコンビを組んだ。
これは僕達がまだ東京に出る前、大阪で仕事をしていたときの話。
コンビを組んで7年。
ようやくレギュラー番組が増え始めた矢先、僕はパニック症候群という
病気になってしまった。
この病気は人前に出ると、吐き気がしたり呼吸が苦しくなってしまう、
芸人にとっては致命的な病気。
ある番組の収録中、大勢の観客を見た僕は頭が真っ白になり、
舞台から出られなくなってしまった。
仕方なく一人で舞台に立った弟は、アドリブで20分モノマネをして、
その場を凌いでくれた。
そんな事が重なって、結局増え始めたレギュラー番組は全部クビ。
京都でのラジオ番組が唯一となってしまった。
ラジオならば人前に出なくていい。
しかし京都に向かう電車の中でも症状は出てしまう。
電車に一人で乗ることが出来なくなった僕を礼二が家まで迎えに来て、
一緒に京都へ向かう日々が続いた。
それでも車中で症状が現れる回数は変わらず、よく途中下車していた。
そんな僕に礼二は「今、伏見桃山駅だからあと15分で着く。
とりあえず次の次まで行ってみよか。」
と励まし続けてくれた。
30分間ホームでただ黙って僕の隣にいてくれた事もあった。
レギュラーの仕事を失い、唯一残ったラジオの仕事も集中してこなせない状況が続く。
電車は特急から各駅停車となっていた。
半年が経ち、僕は才能のある礼二に迷惑をかけ続けている状態が耐えられなくなって
ある日電話で「俺、もう辞める」と言った。
そしたら礼二は「お前とやないと、やってる意味が無い。頑張ろう。」と言ってくれた。
「ゆっくり行こう。」
その日も途中下車して一緒に電車を見送った。
支えてくれた弟のおかげで、今の僕がいる。
私はこれを兄弟愛ではなく、コンビ愛だと思った。
ピン芸人は孤独だという。
絶対の無い芸能界という世界を、共に歩んでいける相方が欲しくなるのだと。
何十年も連れ添っているコンビの絆は、夫婦よりも固いのかもしれない。
たとえ仲が悪くとも、舞台という場においてはこれ以上ないほど息が合っているのだから。
千田なつみ Presents [ 笑い道]
All rights reserved by 千田なつみ & SAKRA 2005