少時は2ヶ月程さかのぼり、去年の暮れの晩。
私が酔っ払ってベッドに寝ていると、リビングでテレビを見ていた夫が
隣に潜り込み話しかけてきた。
「生つるべ良かったよ〜、なっちゃんも絶対に見た方がよいよ」
生つるべと言うのは、毎年年末に放送されている「朝まで生つるべ」の事である。
寝ている私に報告してくるくらいなので、よほど面白かったのだろうと察しはついた。
次の日、朝起きると夫は早速録画していたものを再生した。
そして興奮気味に言った。
「つるべが落語してたんだよ。」
考えてみれば2005年はタイガー&ドラゴンに始まり、漫画・寄席芸人伝など
落語に興味をもった年だったが、結局1度も本物の落語を見ないままに
終わってしまった。
テレビやビデオなどで見るチャンスはいくらでもあったが、
なんとなく踏み出せないままでいた。
つまり今回つるべの落語をみると言う事は、私にとって初めての落語になるわけである。
初めての落語がつるべで良いのか?、という疑問もあったが、
夫のつるべを見る熱い眼差しを見ていると、
この情熱の炎を絶やしてはいけないのではないかと思い、素直に見ることにした。
つるべの落語は古典でもなく創作でもない。
実際に体験した面白いエピソードや思い出話を落語にした「私落語」である。
命名はウンナンの南原らしい。
この日の落語は高校時代の恩師「青木先生」だった。
見終えた後、とても心が暖かくなった。
漫才でもなく、コントでもない。
間違っているのかもしれないが、こういう気持ちになれるのが落語なのかと思った。
たくさん笑ったわけでもなく、スカッとした爽快感が残るわけでもない。
ただ噺の中の人々が、生き生きとそこにいるような空気を感じた。
落語の知識が殆んどない私にとって、つるべの私落語を初めに見たのは
良かったのかもしれない。
2005年はとてもステキなものを見て終わることが出来た。そんな年だった。
千田なつみ Presents [ 笑い道]
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