さんきち なぞ図書館

壁を破る言葉


おもしろい本に出会った。
タイトルがすごく目立つから
ちょっと買うとき恥ずかしかったのだけど、
買ってよかった。
よい本。

「壁を破る言葉」
 岡本太郎著 イースト・プレス 1000円



岡本太郎の言葉が、
1ページにひとつ、太いゴシック体で書いてある。

自分が頭の中で考えていただけの頼りない不確定なものが、
バチッと言葉に固められてドンと載っている。
そんな印象。

この人の血と肉から出た
ほとばしるような力強い言葉が
バンバン目に飛び込んでくる。

自分の実感を言葉にして出しているというだけではなくて、
誰かに語りかけている言葉だと感じた。

わたしが読めばわたしに。

わたしは実は昔から岡本太郎の顔が怖くて
あまり好きではなかった。

苦しんでいるような
正気じゃないような
血走った目。

でも、この本の言葉は
なんだかとてもあたたかい。

誰かを勇気付けようとしているみたいだ。

とても苦しい想いをして生きていて
それを生きる実感として喜んで受け止めて戦っていて、
体からエネルギーを放出させて生きている。

怖い顔だけど、
でも、きれいな人だなあと思った。

あのジワリとした目で
なんでもごまかさずに見ている。

どうしてもページの端を折りたい気持ちになる言葉が
たくさんあって、
折っていったら、途中で「やめときゃよかった・・・」と思った。

こりゃ、折りすぎだ。




それでは、その中からいくつかを紹介。
強い言葉だよ。
ちょっと心して読まなきゃならないような。



もし自分の敵があるとすれば、
画商や批評家や画壇なんてもんじゃなくて、
自分自身なんだ。



音感がいいとか悪いとか、そんなことはどうでもいい。
大体、画才があるやつにロクな絵描きはいないんだから。
センスなんかに頼るから駄目なんだ。



評価されるなんていっさい必要なし!
音が好きならば、音になっていないと言われようと音を出す。
これが前提だな。



まっさらな目をもて!そして目的を捨てろ!



下手のほうがいいんだ。
笑い出すほど不器用だったら、
それはかえって楽しいじゃないか。



自分の存在をもっとも自由に表現しえたもの、
自由感のもっとも豊かなもの。
それが、すぐれた作品。



今すぐに、鉛筆と紙を手にすればいい。
それだけだ。



人間というものは、とかく自分の持っていないものに制約されて、
自分のあるがままのものをおろそかにし、卑下することによって
不自由になっている。
自由になれないからといって、
自己嫌悪をおこし、積極的になることをやめるような、
弱気なこだわりを捨てさらなければ駄目だ。



僕のコミュニケーションに対して
賛成でも反対でもいい。
応じてくれる人ぜんぶが、
ぼくの友達だ。





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