さんきち なぞ図書館
しかけ絵本
子供の頃、うちに一冊だけ、しかけ絵本があった。
しかけ絵本って知ってる?
クリスマスカードとかにもあるけど、
カードを開くと中に折りたたんであった紙が、
バーンと立ち上がってくるやつ。
あれの絵本バージョン。
うちにあったしかけ絵本は、「オズの魔法使い」。
エメラルドの街がたちあがったり、
翼の生えたサルの、
翼部分をひっぱると上下に動くようになっていたり、
扉をひっぱってずらすと、中から、
魔女に化けていた小さなおじさん科学者があえなく登場し、
情けなさそうに笑っていたりした。
面白くて、読むたびに、なんどもなんども動かすもんだから、
その絵本は、あちこち破れて大変なことになっていた。
なんかね、しかけ絵本ってわくわくするんだよね。
動かせるっていうのが。
平面だった世界に、奥行きがあったっていうのかな。
もうひとつプラスの世界があるみたいで、
どうしても知りたくなる。
そういや、前に、
デジカメで撮った写真たちの中に、
動画で撮ってた映像が混じっていたときも、
おんなじように感じたことがあった。
再生を押さないと、
最初のシーンは単なる一枚の写真と同じだから、
最初は動画と気づかないの。
それで、「あ、これ動画で撮ったやつだわ。」
って気づいて、何の気なしに再生を押したら、驚いた。
止まっていた写真が急に動き出す。
そりゃあね、動画なんだから、
再生を押したら動きだすのは当たり前なわけさ。
でもね、予想していたよりも映像ってものは、
はるかにいろんなものを含んでいた。
驚きの奥行きがあった。
いままでそこにあった一枚の写真の中に、
急に風が吹き始めたというかね。
その場のなんともいえない雰囲気が流れ出して、
みてたら、まるで写真の中に入り込んだみたいな気になった。
ちなみにその動画は、沖縄に行った時のもので、
珊瑚の砂を敷いた、真っ白な道に、
青いムームーをきたうちのおばあちゃんと、
赤いスカートをはいた妹がいて、
どちらも後姿。
私が一番後ろにいて撮影していたからね。
その一枚の写真。
再生を押したとたん、おばあちゃんがゆっくりゆっくり
歩き出して、青いムームーが揺れる。
妹はすたすた前を行く。
道の横の高い背丈の草が風でゆっくり揺れていて、
白い砂の照り返しがきつくて、
ほんとねえ、蝉の声まできこえてきそうだった。
15秒かそこらの動画なのにね。
ちょっと動くってだけで、ものすごい広がり方をしたから、
ほんとに驚いた。
でね、そんな驚きと似たようなのを、
しかけ絵本にも感じるのです。
「不思議の国のアリス」
原作ルイス・キャロル 作 ロバート・サブダ
大日本絵画 ¥3800
この本をね、こないだ本屋さんで見つけてしまったのだ。
このしかけ絵本をつくったロバート・サブダさんって、
有名みたい。
「ロバート・サブダの作品群の中でも永く評価される最高傑作でしょう。」
って、裏表紙に書いてあったから。
すごいんだこれが。
まず、あったまいいなあ。どうなってんだこれ?
っていう技術的なものに感嘆するのと、
楽しんで作ってんなあ。
っていうアイディアに喜んでしまう。
しかも、「不思議の国のアリス」ならではの、
奇妙な感じ、異様な感じが漂っていて、
なんともいえず好み。
ひひひ。
あー、いい買い物しちゃった!!!
サンキチ
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