笑えるのに泣ける。
そんな話を書ける作家の知恵に私は心から尊敬し、感謝せずにはいられない。
和田アキコに扮した小日向文世が歌う「あの鐘をならすのはあなた」が、
こんなにも胸に響くとは
なんともバカバカしい話だが、それもこれも脚本家の知恵、
俳優の演技力によるものである。
宮藤官九郎・脚本「木更津キャッツアイ」
ずっと薦められてはいたのだが、なかなか見る機会に恵まれず、
最近やっとDVDを借りてきて全話鑑賞した。
最初から最後まで、実に良くできた作品だった。
基本的にはコメディで、笑いどころ満載で展開されているのだが、
主人公の死というテーマが組み込まれている。
中心は、主人公ぶっちを含めた21.2歳の木更津の若者5人。
バンビ、マスター、アニ、うっちー。
この5人がつるんで毎日野球したり泥棒したりしながら、
主人公ぶっちが癌告知されてから死ぬまでの話。
死という本来重いテーマを軽く扱う事によって、それぞれの者たちの悲しみや恐怖や焦りが逆に浮き彫りにされたように思う。
たとえ間違っていたとしても、一人一人が彼等らしくぶっちと向き合っていた。
それは、薬を飲み忘れないように声をかける事だったり、
泣いているぶっちを放っておくことだったり、
辛くて、どうしたらいいのか分からなくなってイライラすることだったり、
息子の無茶の片棒をかついだり、
普通に普通に振舞おうとしたり、、、。
息子の死を知った父(小日向文世)が、
なんでもないフリをして和田アキ子のものまねをするシーンがある。
「こうへい君(ぶっち)見て見て!!」とヅラをかぶり、真紅のドレスを着て「あのかぁ〜ねぇ〜を〜」と歌いだす。
笑える場面のはずなのに、涙が止まらなかった。
泣かそう泣かそうと演出されている話よりも、よっぽど心が痛かった。
話の構成、演出、テンポ、キャラクター、全てがよくできた作品だった。
こういう作品を見ると、感動し、尊敬し、羨ましくなる。
クドカンいいなぁ。
千田なつみ Presents [ 笑い道]
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