ムトープレゼンツ「フチドル」
第39回 〜オードブル〜
みなさんこんにちわー。もう冬なんですかね。寒い。
あ、そうそう。ちょっと思い出したことをひとつ。
さんきちなぞ図書館でさんきちさんが前回と前々回に紹介していた作品ね、
実は僕大好きなんですよ。
志賀直哉の「小僧の神様」は僕が一番好きな小説。
椎名誠の「哀愁の街に霧が降るのだ」は僕が本を読むきっかけになった本。
だからなんか嬉しくなって。書いてみました。報告までに。
ついでに好きな曲も紹介。吉田拓郎の「イメージの詩」です。
これ知ってますか?この曲。なんか聴くと涙出ます。
僕の中でこの曲以上の曲ってないかも。
あ、そうか、奥田民生の「カスタム」って曲も同じくらいだな。
両方ともなんつうか、解き放った感じ。
目を閉じて体から力とか抜いて聴いてしまう。
まあ、大抵車の中で音楽聴くんで目を閉じたりしちゃいけないんですけどね。
「イメージの詩」すごいですよ。
中学生の頃理解できなかったんですけどね、ちょっと前に偶然聴いたら、
もう、涙が溢れてきて。「ああ、そうやったんか」って。
特に強制もしないけれど聴いてみてください。
と、こんな感じで始めてみました。
さーて何をかこうかなあ。
あー、ちょっと今ヘッドホンで音楽聴きながらこれ書いてたら、泣きそうだわー。
大学の頃聴いていた音楽は、あの時のにおいとか、温度とか、
不安とかを全部蘇らせる。
あー、このセンチメンタルな気持ちで今回はお送りしますね。
あ、内の近所の素敵なお話をひとつ。
田舎はよく言われているように、近所付き合いが普通にあるんです。
なんつうか、「醤油貸してー」とかってのはないですけどね、多分。
僕が住むところはほんっとに田舎なんですね。
特におばあちゃんたちはほとんどどこかに出かけたりとかなくて、
小さい世界で生活しているんです。
いつもうちのガレージに4、5人集まって井戸端会議みたいなのを繰り広げてます。
うちの敷地なんだけど、うちの祖母が居なくてもその会議は平然と行われるんですね。
で、もうそこで誰かが流した噂というのは、いいもの悪いもの関係なく、
無差別に近所に知れ渡っていくわけです。
やたらとね、芸能ネタとかに詳しかったりするんですよ、断片的にだけれど。
まあ、でもおばあちゃんたちは、そのスモールワールドで
「いつか自分が噂のネタになるんじゃないか」という不安と緊張の中で生活しているようです。
そのせいか、ボケてないですよ、みんな、ホントに。
で、田舎はですね、お酒を飲むことも多いんですよ。
他に楽しみも無いし、っつうとこかなあ。何かあると集まって飲む。
で、お店とかで飲まずに誰かのうちとか、集会所みたいなところで飲んだりするんですね。
で、そんなときの酒のツマミは奥さん連中が作ったり作らなかったりなんですね。
で、作らなかったりの場合どうするか、というとお弁当屋さんとか、
スーパーとかに作ってもらうんです。酒の肴セットみたいなのを。
枝豆とか、カラアゲとか、おつまみオールスターズをまとめたようなやつね。
これをなんというか知っていますか?一般的なんかな?これ。
スーパーとかのチラシにも書いてるくらいだから共通かなあ。「オードブル」といいます。
フランス語ですかね。「前菜」という言葉のイメージからは大きく逸脱したおつまみセット。
これ都会でも通用するんですか?
「オードブル二つ三つ注文しときゃ大丈夫」みたいなこと言わないですよねぇ、都会は。
あ、お花見のときとか持ってくやつがそうだな。あれ、オードブルだ。
で、長くなったけれど、前述のうちの近所のおばあちゃんたちの話に戻ります。
おばあちゃんたちが「オードブル」という横文字を覚えることはきっと困難です。
だってね、ある日うちの祖母ヤエコ(80)が口にした言葉を僕は聴きのがしませんでした。
祖母ヤエコ(80):「今度花見にオオドンブリ持ってくことにしたけん」
孫 610(18):「!!!!?大丼!?」
ね、ビックリでしょ。横文字が漢字になったよ。ははは。1031(天才)。
大きいドンブリですよ。なんとなく合ってるような感があるのが不思議だけど。
話によると、我が家のガレージでの井戸端会議でお花見の話が持ち上がったらしく、
じゃあお弁当はどうしようか、ということになって、
ある人が「もう作るの面倒やけん、オオドンブリにしよう」と言ったらしいのです。
おばあちゃんたち、横文字に誰も自信を持ってないから一人が
自信ありげに放った間違った言葉を「ああ、そうだったんだ」と変に納得して
各家庭に持ち帰ってしまったわけです。
だからうちの近所のおばあちゃん連中の大半は、
オードブルを「大丼」だと勘違いしたまま一生を終えていく可能性があるのです。
けっこう幸せだなあ。
まちがった指導者がいると、ピュアなシチズンは間違った方向へ進んでしまう、
という教訓を与えてくれたのかもしれません。
あ、ぜんぜんセンチメンタルじゃないなあ。
ちなみに僕の祖母ヤエコ(80)はジャガイモの種類のメークインを
「メンクイ」と呼びます。
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