さんきち なぞ図書館

哀愁の町に霧が降るのだ



また布団かよ!!!

と思われそうですが、しかたがないのだ。



今回もちょろっと布団の話から。





こないだの布団事件のときにね、

「布団運ぶのに、宅急便代がいちいちかかるくらいなら、

いっそのこと、これ自分で持ってけばいいんじゃない?」

って思ったんだ。



うちからクリーニング屋さんまでは

歩いて5分くらいの距離だし、

私の背筋(セスジじゃないよ。ハイキン。)

は人一倍強力だし、

物理的には、そんなたいして苦労せずに持っていけるはず。



でもなあ。うーん。

「街なかを、敷布団背中に担いで歩く女」

ってのもねえ。

ちょっとどうかなあ・・・と思って結局諦めました。



その光景を想像すると、

「変わり者」っていうのを少し上回って、

「頭おかしい」と思われかねないし。





でね、そうやって諦めた日のすぐあとに、

そのとき読んでた本の中で、

「布団を背中に担いで、河原に干しに行く」

っていう場面が出てきたのです。



思わず、「おお!」と思ってしまいました。

なんてタイムリー!



どんな場面かというと・・・



若い男4人が、よく晴れた秋の日に、

それぞれが自分の布団を背中に担いで、

えっちらおっちら並んで歩いてゆくの。

大きなカタツムリみたいになって、

河原目指して。



これ干し終わったら、

みんなでおいしいカツどんを食べにいくんだぞお!って

思いながら。



なんだか、面白い光景でしょ。

映画になりそうな。





この本の不思議なのは、読み終わると、

映画をみたあとみたいに、「光景」が頭に残るところ。



読んでるときは、おかしくって、何度も笑っちゃうのに、

ばかばかしくて苦笑とかしちゃうのに、

その、頭に残ったひとつひとつの光景は、

とても独特の雰囲気を持っていて、

思い出すと、なぜかすこし胸が痛い。



この胸の痛いのは、

「なつかしい」とか「郷愁」とかなんだろうか。

ちょっとそんなのに似ている気がする。



もう戻ってこない、ある時期独特の体験を、

作者と一緒に思い出すような本だからからかもしれない。





「哀愁の町に霧が降るのだ」 椎名誠著 新潮文庫
上下巻 560円と600円





ええとね、この本、どんな本かというと、

椎名誠という人が若い頃、

江戸川区の「克美荘」というアパートの、

陽の射さない6畳の部屋で、

男4人で共同生活していたときの話を描いたもの。



ほんとにねえ、6畳に男4人で暮らしてたんだよ。

すごそうでしょ。

一人はそこから会社に行ってたし、一人は司法試験の勉強してたし。



みんなでその部屋でぐうぐう寝て、

ものすごく少ないお金を持ち寄って、誰かがご飯つくって、

誰かがお酒調達してきて、飲んで騒いでひっくりかえって。



なんで、そんなことしてたんだろうかというと、

「面白そうだったから」だと思う。

若い、そのときしかできないことだから。



私が男で、友達に誘われたら、

ちょっと勇気はいるけれど、住むな、絶対。克美荘に。

その体験をしてみたい。



酒好きで、馬鹿馬鹿しくて、

笑っちゃうくらい変なキャラの男子たちが、

馬鹿騒ぎして、ちょっとさみしがったりして、毎日を生きている。

もちろん、生きてるんだから、そこにはいろんな事件が起こってくる。



なんだかねえ、女子には体験できない、

男子独特の、すこし胸が痛くなるような青春と人間関係を、

垣間見せてくれるような本。




こんな世界があったのかと思ったよ。

女子だから知らなかった。

男子もいいなあ。

面白いなあ。





さて、それとね、今回は、この本を教えてくれた人もちょろっとご紹介。

この本を勧められて読んでみて、ふふふと思ったのは、

まるで、本人が登場人物で出てきそうだったから。

克美荘で、お酒飲んでひっくり返ってそうだもん。



今の平成の世に住んでいるのに、

なんだかこの椎名誠の学生時代に暮らしているみたいな人。

その人のつくる曲もね、ちょっとそんな匂いがする。


その人は、東京60WATTSというバンドのリーダー

大川たけし氏です。



ひとことでは紹介しきれないが、

怪物のようなライブをする人。

会場のみんなが踊りだしてしまうような。

楽しくて息がきれるような。



サイトにエッセイが載っていますが、

椎名誠ばりの面白さ。

傑作です。

笑っちゃうよ。

そちらもお勧め!

http://tokyo60watts.com/index2.htm


それでは!今日はこれにてどろん。



なぞ図書館司書 さんきち

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