ムトープレゼンツ「フチドル」
第35回 〜球磨川ラフティング その2〜
こんにちわー。ムトーです。
前回の熊本県人吉市でのラフティングのお話の続きをしましょう。
えっとー、もうヘルメットとか、ライフジャケットとかを装着して、
出発するところまでお話ししてるんですね。
この日は台風通過の直後で、川がすごく増水していたんです。
スタート地点のゆるやかな流れのところでオールを使う、つまりボートを漕ぐ練習をしながら、
文字通りその流れで急流へ。
そりゃね、びっくりですよ。覚悟はしてるんですけどね。
テレビとかで見たことあるんで。なんつうのかなあ、激しい流れ
に乗ったときなんか、ほんと奇跡的にみんながボートから落ちずに済んでいる、
というギリギリの感じ。なんか、とても計算されているようなスリル。
自然の中で遊んでいるのには間違いないけれど、遊園地の絶叫マシンのような
「多分だいじょぶ」な遊び。でも、実際遊園地よりも「安心」はできない遊び。
でね、死ぬ思いをしました。
「あ、死ぬな、こりゃ」とか「はあ、こうやって人って死ぬんだあ」って
ゆっくりと死を覚悟したのです。
ボートの一番後ろに乗って、舵を取り、
僕らに指示をしてくれるインストラクターのお兄さんが
「ここは流れがないので、ボートから降りて、しばらく泳いでいいですよ」
って言ったんですね。特に泳ぎが得意ではないけれど、
特に泳ぎが苦手でもない僕は躊躇することなくドボンッ!と。
ドボンッ!と行くか行かないか、とかっていう選択って大事ですね。
これは慎重に行かないといけない選択でした。
しばらくそのあたりでじゃばじゃばと泳いで、ゆっくりな流れに流されてました。
で、「そろそろ、ボートに戻ってくださーい。出発しまーす!」ってお兄さんの声。
「はーい!」って。ボートに向かって、5年ぶりくらいのクロールを・・・・。
す、進まない。ボートがなんだか遠ざかる。
僕、ボートが浮いている水の流れとは違う流れに入り込んでいたみたいです。
しかも、そこは渦巻き状の流れ。ボートは僕を残したまま下って行きます。
それを水の中から見ながら、最初はもがいてみたんですけどね、
どうやってもその渦から抜け出せずに、「あーれー」って、
ぐるぐる回っているうちに「あー、もうどうでもいいや」って気分になりました。
もうめんどくさくなって。手足動かすの。
ライフジャケット付けてるから何周もするんですよ。
で、体調も最高潮に悪い時だったので、気も滅入っていたりしててたもんで、
生きることを止めようと決意するのに時間はかかりませんでした。
体から力を抜き、目を閉じた瞬間(ここらへん大げさです)、
「だいじょぶですかあ!?」という声。目が覚めましたね。
「あ、もうちょっと生きてていいんだ」というなんか許されたかんじ。
別のボートが僕をみつけてくれたのです。
タイタニックから投げ出された僕を。救命ボート(って普通にラフティング中のボートなんだけども)
のお兄さんは「つかまってくださーい!」って言ってプカプカ浮く、
大きな「浮き」のようなものが付いてるロープを僕に向かって投げてくれたのです。
こういう画(え)テレビでみたことあるなあ、
とか関心しながらキューメイロープに手を延ばしました。わーい。
言わばね、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」みたいなもんですよ。
「そうです、ムトーは一度だけ、善いことをしました。」って
お釈迦さまが見ていてくれたんだろうなあ。
あんとき、車に跳ねられそうになっていた犬を、間一髪で助けたことかなあ。
それとも、毎年、24時間テレビに多額の募金をしようとしていることかなあ。
まあ、ともかく、お釈迦さまが僕に蜘蛛の糸を垂らしてくださったので、
それにすがったのです。
なんか僕、悪いことしたんかなあ。
別に、もう一人いて、その人を蹴落とそうとしたっつうわけでもないんですけどね・・・・。
蜘蛛の糸は切れてしまったのです。
つうかね、僕がロープをつかんだ瞬間、
ロープを投げてくれたお兄さんがロープから手を離してしまって。
手が滑ったっつうやつでしょうね。
また僕は渦の中に戻されました。
もう、笑いましたね。「ははは」って。
ちなみに後で聞いた話なんですが、
そこらへんの水深は30メートル強(!)だったそうです。
ああ、なんか書いてたら、思い出して疲れてしまった。
もう、次回は完全に秋になっているだろうけど、
この夏の話の続きをしつこく引っぱります。
痛ーい!意志は投げんといてー。
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