第68回 「旅で知る 日本の歴史」
10月下旬くらいから旅に出ようと思っているものの、
入国した後の行き先で悩み中。まだ稲妻のような「ココダ!!」が降りてきません。
行き先は「やっぱり」中華人民共和国。
自分にとってのチャイナってのは、これまでお話した、歯のハナシとか、
モンゴルでの悲劇とか、長すぎる列車の旅やウイグル族だったりするのですが、
それは本当に「ダイジェスト版」。
愉快痛快ゲゲーッなことも沢山あるのですが、
同じくらいに辛いことも山ほど。
多分後者のほうが多いくらいなんじゃないかと。
私にとっての中国旅は、現地の人たちと話しをすることで、
今の中国の現状や、人々の生活の話、そして私たちとの関わり合いをリアルに感じることができる。
そんな醍醐味を持った、興味深い場所に「入る」という感覚が強い。
だから、すごくイヤなところも沢山あり、
実際イヤな思いを山のようにしてきているのですが、
オシャベリが好きなワタシにとって、その国のことをその国の人から詳しく聞けるのが
ここしかナイいう理由で、毎回毎回たどり着いてしまうのです。
中国、とか北京、というと今やサッカーのアジアカップの話題で持ち切りなのですが、
ニホンコンに言わせてみれば、あんなの昨日今日始まった話ではナイ。
もう旅に出れば、日常茶飯事でこんなことが起こる。
2年ほど前の話。訪れた小さな町でのこと。
夜ヒマだったので、サウナに行ったのだが、場所が悪かったか、その町は南京郊外。
小さなサウナに可愛い女の子が3人ほど入ってきて、ニホンコンを入れて4人となった。
あまりにもヒマだったので、この町のナイトスポットでも聞こうと思ったそのときに、
彼女たちの会話で開きかけた口を閉じる。
Aさん「何この熱さーー!」
Bさん「まるで南京大虐殺の時の日本軍の拷問みたいーーー!!」
Cさん「絶えられない!地獄よね」
いや、ここで私が日本人なんてバレたら、
このままサウナに置き去りで閉じ込められ、
南京錠でも掛けられてしまうんじゃないかと、本気で震えたりした。
そして彼女たちが出るまでじっと顔を伏せて、
「ただの相席の人」を演じていたのであった。
ニホンコンの旅は、先程も申し上げた通り
「中国人とのオシャベリ」をメインにしているのですが、
これにはかなり高い可能性で「過去の話題」が出て来るので、
トイレで格闘していたり、お父さんの収入を聞かれている以外は
殆どコレと戦っているようなものなんです。
私たちも普段そうなのですが、相手が外国人と分かると、
その国の知ってるコトバを並べたりして、相互理解を深めようとするじゃないですか。
んで、中国の場合、私が日本人と分かると、彼らは知ってる日本語を並べます。
それが主にこの2つ
「ミシミシ」
「バカヤロ」
です。
ミシミシ、とは「飯、飯(めし、めし)」のこと、バカヤロ、はそのままの意。
両方とも、もちろん戦争の話からきているのでしょうが、
これだけ聞いても日本と中国の関係が分かるし、
日本人が向こうでどう振る舞っていたのかが伺われる。
今でいう、イラクの米軍と、刑務所のイラク人みたいなものでしょうか・・
最初にこの単語が出てきて、この人はどーやって「相互理解」しようしているのか、
ニホンコン、これには本当に毎回頭をひねる。
今の若い人たちなんて、
これが何の意味なのかもハッキリ分からないで発していたりするので、
深い意味を持って言ってるのか、言ってないのか、判断してみたり。
結構あるんですよ。これがホントに。
さっきまで楽しくお喋りしてたのに、何かの拍子に突然「東条英機を知ってるかね?」と。
ニホンコン「知ってるよ」と一。
本当に「名前を知っている」というレベル。
となると、向こうは弾丸の如く、
中国に何をどうしてどうなった、という話から、日本人は悪い、
みたいな話を延々と聞かされたりするのである。
それが列車の中だったりすると、最悪。私ひとりに対して、
中国人が8人くらい、その話題に加わっていたりするのだから。
で、引き続き「731部隊がどうした」とか、
昔の忌まわしい出来事を取り出しては、
私にどう思うか意見を求めて来るのである。
いや、これチョット待ってよ!この場所でニホンコンは、
言ってみれば「日本代表」なワケであって、私の意見で、
日本が、日本人どうなのか、をみんな知ろうとしてるのである。
いやー。重たいよ、しかも話題も。
で、肝心のニホンコンの意見はというと、
「単語しか知りません」もしくは「その意味、ワカリマセン」なのである。
イヤ、私が悪いとかおバカとか以前に、歴史の教科書に1行とか、
太字でしか載ってなかったりするじゃないですかそんなの。
しかもそれについて、授業で詳しく教わらなかった=興味も持たなかった。以上。
それを正直に話すと「日本の歴史教育はどうなっとんじゃーーーー!!」
みたいに火に油を注ぐ、というかダイナマイトを投げ込むみたいな
結果になったこと多々ありなので、あまりこれは言えない。
これがイヤで、行き先によっては韓国人といって通したこともある。
旧満州国があった、中国の東北地区へ向かう電車では、
日本人とバレたらどうなるか分からないと言われていた。
但、ニホンコンの顔は、中国人からすれば「典型的な日本人」の顔をしているらしく、
一発で見破られるのがオチなのだが。
ニホンコンは、その土地の「語学」に興味はあったものの、
歴史については、全く持って勉強不足。
しかも、目の中がメラメラと燃えているような人民たちと、
対等に議論していける頭脳はない。
そもそも歴史的事実からして不利な立場なような気がするし。
だいたいこのような方法で説き伏せようと試みる。
(じーっと相手の目をみながら)
「いやね、そうはいってもさ、アンタはアンタ、ワタシはワタシじゃん、
13億いる人民と、こちら1億という、莫大な人数の中で、
こうして出会って話をしてるワケじゃん」
から始まり、
「過去は過去、今は今で、個人レベルから始まる仲良しになりましょうやーーーー」
(といって肩をポンポンポンとたたく)
などと「ワタシタチ、トモダチ」作戦を展開。
だって、それしかできないんだもんね。
実際そうなんですよ、教育の違いもあって、
向こうは徹底的に反日教育を仕込まれたのかもしれないし、
実際日本は今こうして戦争でどうしたこうした
「言わず」して色んなことが回っている。
ワタシは戦争を知らずして産まれ、本当によく知らないわけであって、
もちろんそれは恥ずべきことかもしれないけど、
もう目の前に中国人の、そして日本のことをよく思ってない人なんかが現れてしまったら、
どうにかして対応しなくてはならないのだ。
ワタシにできることは、「相手と仲良くなる」ただそれだけかもしれない。
一応あらん限りの中国語の歌、
留学当時は「抱一抱(パオイーパオー/抱きしめて)」という
アップテンポのラブソング(超ダサイ)が流行っていたので、
それを恥ずかしげもなくみんなで大合唱することにより、
人民の興味の対象をそらそうと努力していた。
そんな小さな、小さな国際交流を、多分今回もしてくるのだろうと思う。
私は、中国という、開けてはならないパンドラの箱を開けた気がする。
旅に出る前に、よくこんなことを思っては、
少し落胆したり、そして少しうかれたりしている。
8月24日 坂下日本/香港
追記:「相互理解:香港篇」
私が日本人と分かると、向こうの若者はすぐに「ヤメテヤメテ」と言う。
どうやら彼らにとっての日本は「エロビデオ大国」という印象らしい。
全然嬉しくない。
Kaori Sakashita
Presents [ サカシタニホンコン ]
All rights reserved by Kaori Sakashita & SAKRA 2004