さんきち なぞ図書館

夢十夜



やあ、みなさんこんにちは。

キングです。(←最近のあだ名。由来は不明。でも、たぶん、B型だから。)


最近ね、なんだか仕事が山積みで、

切羽詰って、息が苦しくて、涙がでそうだったのに、

おとといくらいにふと、「てやんでい」と

やけくそ魂に火がついてしまいました。


もうね、こうなったら、気持ちは楽。


もういいや。やるだけやりゃ。

できなかったらどうしようだなんて、心配してらんないわ。

できなかったらできないまでさ。

死なばもろとも。倒れるときは前のめり。


ってなことで、なんだか落ち着いて、

逆巻く嵐の中、「た〜すけて〜」などと楽しげに言いながら、

仕事をしています。

こっちの方が、気持ちが焦ってない分、実ははかどるんだよな。

心がシンとして頭が冴えてるし。



さて、ということで、本の紹介をしなくっちゃ。

今日は、なにを紹介しよう。



夏夏。夏ですね。

夏といえば・・・


わたし、夏になると、夜の話が読みたくなります。


冷たくてしっとりして、

暗闇でなにかつやつや光っているようなやつ。


ここんとこあんまり暑くって、

そんなんが何冊か読みたくなってしまいました。


そこで、そんな「夜の話」の中から、

とても奇妙な一冊をご紹介。



『夢十夜』 夏目漱石著 新潮文庫 420円




こんな夢をみた。 という一行からはじまる、十篇の夢の話。


「夢十夜」を思い出すと、すぐ、

骨にこたえるほどの甘い百合の香りと、

赤子の泣く声が、頭に浮かびます。


たしか、十篇の中に、そんな話があったはず。


あとは、なんだろう。


月と太陽が、

早巻きのフイルムみたいに、交互にのぼったり沈んだりする情景。

響きわたる、仏像を彫るノミの音。

夜、つやつや光ってる黒い海の上を、木の船でゆくところ。


詩のような、怪談のような、おとぎ話のような、

奇妙な夢の話。


文章ってものを使って、

なにか不思議な雰囲気のものを生み出して、

コトンと、目の前に置かれたような感じ。


最初読んだとき、「ううむ。やるな、夏目漱石」ってうなった。

そんで、毎回読むたびに、「やはり、やるな・・・」とうなっている。


この本、読んだあとの余韻がすごい。

雰囲気が体に残るよう。


この本を読んだら、夏まっさかりの満員電車に揺られていても、

頭だけ、ひやりとした冷たい夜の世界に行ってしまうよ。

そんで、しばらくは、その余韻が抜けずにひんやりしている。


いいでしょ。夏に。

おすすめです。



<おまけ:夜の映画>


「マルホランドドライブ」 デイビットリンチ監督


「夢十夜」の外国版映画バージョンって感じの映画。

奇妙な世界に、知らぬ間に、ひきづりこまれてしまう。

あんまり深くひきづりこまれたので、映画館で、しばらく立ち上がれませんでした。

奇妙でゴージャスなごちそうを振舞われたような感覚。

ひんやりぞくぞくします。(ホラー映画ではありません。)

うっとり。



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