第53回 〜モンゴルリピーター〜
「私、内モンゴルのリピーターなんです」
東京で何度言って変な人扱いされたことか。
サカシタニンコンです。
内モンゴルとは、中国国内にある「内蒙古自治区」のこと。
ちなみに、中国人はモンゴル共和国のことは「外蒙古」という。
ニホンコン、ここには3回も訪れた事があるほど、大好きな場所なのです。
何故かって
「生きとし生けるものが住まう場所」だからだ。
今日はのっけから死ぬだのなんだのというナンギな話はおいておいて、
「生きる」を感じた話をしようと思います。
最初に訪れた時が、んもう強烈だったのだ。
もう、大地を感じ、生命を感じ、そして私たちも生きていると思いました。
ニホンコン一行は韓国人と日本人の7人くらいのグループを組み、いざ目指すは大草原。
最初内モンゴルの中心部まで電車で向かい、
そこからガタガタとジープでゆられること3−4時間。
目指すは草原の中の「パオ」。
夏場は観光客が中心にそのパオに集まってくるのだが、
観光客目当てのところ、と、タカをくくっていたのだが
そんなちっぽけなこというのはニホンコンのハートだけで、
もう道中から、やられてしまったのだ。
○羊飼いに あう
途中、何回か車を降りて写真を撮ったりなぞしていた一行に、
羊飼いのおじいさんが声をかけてきました。
羊飼いなんて、お話しの中だけの人物かと思いきや、目の前にいるんですよ。
もう日焼けで真っ黒で、毎日来ている洋服は、ぼろぼろになっていました。
(以下、羊飼いのおじいさんは「羊」、ニホンコンは「ニ」)
羊「タバコを一本、くれませんかね」
ニ「いいですよ」(といって、男の子からタバコを奪う)
ニ「こうして毎日羊たちと一緒にいるんですか?」
羊「そうだよ、430頭とね」
お、覚えてる。こんな莫大な羊の数を。
ニ「覚えてるんですか?全部の羊のこと」
羊「モチロン、顔も、名前も分かるよ」
ニ「ところで、いつも何時から何時までこうして外を歩いているのですか?」
羊「さーあ、知らないねぇ。時計ってものが、ないからね。
いつも日が昇ってから出発して、日が暮れるまで。ただ、それだけなんだよ・・・」
一行、ア然としてしまいました。
同じアジア人、しかもお隣の国中国で、
こんなにも自然な暮らしをしている人たちがいるなんて!
ま、後から考えてみたら、このおじいさんの出演は、旅のプロローグにすぎなかった
のだが・・
そしてニホンコンたちはおじいさんと別れてジープに戻り、一路パオを目指しまし
た。
○パオにつきました。
大草原の中のパオの数々は、観光客相手の場所といえど、圧巻でした。
360度見渡す限り地平線に、ぽつん、ぽつんと点在するパオ、
今晩の私たちの宿なのです。
私たちは7人全員が眠れるくらいの大きなパオに通され、
そこで荷物を置き、少し散策をすることにしました。
道中いきそびれたトイレにでも行こうと向かった先は、
コンクリートで壁と穴があるだけの共同トイレ。
もう何年も何年も汲み取りも何もしていないのか、
あふれ出るモノと、遠くからでも想像がつく異臭により、
全員、せーので母なる大地に「お返し」をすべく、それぞれ違う方向に歩き出しまし
た。
ずっとずっと歩いていくと、隣の人が見えなくなります。
そうしたところで、落ち着いてヨウを足すのですが、
女子のニホンコンがこんなことを言ってはなんなのですが
もう、これがまたすごくて。(あ、食事中の方は終わってからお読みください)
まず、ヨウを足すじゃないですか。
それで、コトが終わって立ち上がるじゃないですか。
んで、立ち上がるのが早いかまたは同時かくらいに
「うわああああああああああーーーーーっ」と。
やってくるのですよ、虫たちが。
もう、ハエだの、デッカイ蟻だかなんだかわかんないのから、いろんなものが
一斉にニホンコンのモノをめがけてやってくるのです。
中にはそれを「持っていこう」とする虫まで出てきたりして、
オイオイそれ私のなんですけど、と
声のひとつでもかけたくなるくらい。
普段ならムシなんて苦手なニホンコン。
「うぎゃーーーっ」っと言って逃げ出すのだが、
そこはもう生きることに必死なムシに感動してしまい、じっくり見てしまったっけ。
「ミミズだーって、オケラだーって あめんぼだーってー」
こんな歌が、今にも聞こえてきそうでしたよ、その時は。
「パオの跡、遊牧民族は、こうして移動しながら暮らしているようです」)
○歓迎の 儀式
少し落ち着いたところで、昼食か、と思いきや、
どこからともなく聞こえてくる羊さんの鳴き声。
男たちが5人がかりで羊さんを捕まえては手足をくくり、
いやな予感だな・・・と思っていたのもつかの間
「ザクーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッツ」
羊さんを上から吊るくって、
お腹の上から下をでかいナイフでざっくり切ってしまいました。
驚くのもつかの間、慣れた手つきで内蔵を取り出し、
あああ、もうここからは記憶が飛んで覚えていません。
そして、何事もなかったかのように、その日の昼食で彼の水煮が食卓にのぼり、
グロテスクな頭なんかが「どーん」とテーブルを支配していました。
(目玉はどうやら栄養があるらしく、凄まじい勢いで薦められたのだが、
始まったばかりの旅でお腹を壊しては、
と丁重に遠慮しながら「ササッ」と隣の男子に渡す)
気になるお味は「確か羊くさくて全然おいしくなかったっけ〜」なんて
思いながら昔の日記を読み返してみると
「非常好吃(フェイチャン ハオチー:すごいオイシイ)」と書いており、
あの時のわが身の味覚センスがおぞましくなる。
この時点で、まだ当日の12時。
これだけで、終わると思うなかれ、ニホンコンの内モンゴル。
4月27日 坂下日本/香港
Kaori Sakashita
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