あれは7年程前だったろうか。

私はまだ高校生で、世はコギャルブーム全盛期だった。

そんな中、スーパールーズソックスになど目もくれず、ひたすら笑い道を突っ走っていた私に

唯一のお笑い仲間であるアズサちゃんが、一本のビデオテープを貸してくれた。

東京に住んでいるお姉さまに録画してもらったお笑いライブが収録されているという。

私は胸躍った。

岩手の片田舎に住んでいた私にとって、東京の笑いとは実に魅力的な響きであった。

岩手で手に入る笑いなど、所詮メジャーになった芸人達ばかりである。

まだTVに出たことのないような駆け出しの芸人達のライブが見れるのだ。

わーい!

私は自転車を全速力でこぎ、家に帰った。

ホリプロライブか何かだったと思う。

16歳の私の脳に強烈に焼きついたコントがあった。

「スライドボーイズ」。

あのネタはバナナマンの中でも3本の指に入る逸品ではないかと思う。

強烈なキャラクター、昭和スターを思わせる衣装、そして耳に残るメロディー。

このネタはバナナマンが「スライドボーイズ」というミュージシャンに扮して

(と言うか、実際にCDデビューもしているが)弾き語るコントである。

ジャンルとしては、ビジュアル系ロックムード歌謡らしい。

なんだかよくわからないが、それまでの笑いの概念を覆された気がした。

「あぁ、こういうのも有りか」と。

それから何度かバナナマンのネタを見る機会があった。

夢と現実の狭間を見ているような、なんだか「世にも奇妙な物語」の笑い版みたいな

彼等のネタは、そんな雰囲気をかもし出している。

最近やっとメジャーになってきたので、

今後もお笑い界の異端児として活躍していって欲しいと思う。

因みに「スライドボーイズ」の音楽的目標は

自分達がボロボロに朽ち果てて、なけなしの金でラーメンをすすっている時に

有線から流れてくるような音楽を世に出したい。

だそうだ。

目標が達成できることを願おう。


千田なつみ Presents [ 笑い道]
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