竜馬がゆく
みんなが夢中になるような!
エンターテイメントな!
時代小説!
はじめは、そういった本を読むつもりでいました。
ほんと、ただそれだけのつもりで、
ワクワクしながら、本を開いたのでした。
ところがどっこい!
「竜馬がゆく」 司馬遼太郎著 文春文庫 ¥552
(ちなみに写真の六巻はこの値段)
ほんと、ところがどっこいでした。
たまげた。
こんなことってあるんだなあ・・・。
いやいや、もちろん、
みんなが夢中になるような!
エンターテイメントな!
時代小説!
これは、あたっていました。
予想通り、手に汗握るエンターテイメント。
幕末の武士たちの、覚悟や、思いやらが交錯し、
時代の大きなうねりを作り出してゆく。
真剣になって、とにかくページを次へ次へとめくりたくなる。
そりゃあ、そうなんだけどもね、
でも、そんなことは、
この本の魅力の二番手三番手だ!
って、言いたくなってしまう。
だってねえ、
そんなことよりなにより、
「坂本竜馬」です。
この人、有名?
それはそれは、有名なんだろうな。
わたしも名前は知っていた。
名前と・・・あとは、なんとなく、
「サムライの格好をして、大きな船に乗っている」
というイメージだけ。
(一体、学校で何を勉強していたのだろうか。
しかも、これ、どっから仕入れたイメージなんだろう?
そんなビジュアル、教科書に載ってないよね?)
で、この本で、坂本竜馬という人が、なにをしたのか。
それがどれだけ、大きなことだったのか。
そんなことより、それをやれたのは、
坂本竜馬という人の、
「ものすごく特異な人柄」
のなせるハナレワザだったのだ。
ということを知りました。
この特異な人は、
ふつうの人とちょっと違う考え方をするのです。
たとえば・・・
みんなが、お家のために!とか、
倒幕だ!とか、いや、幕府を守るぞ!
とか必死で戦っているときに、
「こんなふうに、藩同士で戦っていたら、
日本が滅びてしまうよ。フランスとかさあ、狙ってるよ。」
って、言い出すんだもん。
「まずいだろう、それは。」って。
それとか・・・
グループの中で、一人だけ全然違う思想の人がいて、
「一丸となっていかなければいけないときに、
あいつがいたらだめになる。切るしかない。」
って、みんなが血相を変えて大騒ぎしているときに、
「大勢の人間がいれば、違う考え方の者もでてくるだろう。
それをいちいち目くじら立てて、
一緒にやっていけないようでどうする」
と笑い飛ばすとか。
みんなの頭の中の世界と、全然違うことを、
ポンとだしてくる。
とんでもないところから、論理がやってくるから、
それでみんな、口がぽかんと開いてしまう。
しかも、その論理は明快で、悲壮感がなく、
なにか明るいものを含んでいるから、
みんなその論理にひきこまれてしまう。
この人、そんなのばっかり。
私利私欲なく、なにか、おおきなもののために、
細かいことにひきずられないで、進んでゆく。
これを、きっと、ほんとうの政治家っていうんじゃないかな。
私は、ものすごく近視で世の中をみていたので、
こんな人がいたんだ。
こんな大きなピントで世の中を考えることもできるんだなあって、
ほんとびっくりしたのでした。
いいなあ、竜馬、かっこいいなあ。
全部で八巻もあるけど、
読み始めたら、あっという間だよ。
おすすめ。
それでは!
なぞ図書館司書 さんきち
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