だれも知らない小さな国
わあ。
とうとう出してしまった!
この本を紹介するなんて、
ドキドキしてしまうなあ。
ふう。さてと。
落ち着いていこう。
「だれも知らない小さな国」
佐藤さとる著 講談社 ¥1,100
この本に対する私の気持ちは、
どう言ったらいいだろう。
うまくいえないけれど、
ちょっと泣きそうになる。
のっけから、なんだそりゃ、といった感じですが、
ほんとちょっと泣きそうになるんだよ。
ほんとに。
きっと相当、深い感情の部分にいるというか、
こころの奥の方にいるんだろう。
ちょっと突っつかれると、涙がでてしまうようなところ。
要するに、好きで好きでたまらないのですな。
好きすぎて泣けてくるみたいな。(演歌か?)
一人娘を持つお父さんみたいな感じ。
(ちょっとちがうか。)
柔肌というか、弱どころ。
この本に対する私の気持ちには、一部、
「郷愁」みたいなものが含まれているようです。
なつかしくて、せつない気持ちになる。
なぜなら、この本の舞台は、少し前の日本。
主人公の男の子と一緒に、わたしもそこで育ったような気がするから。
この本のことを考えると、
最初に、わたしの頭の中には、
小さな泉のふちにしゃがみこんで、
真剣にその中をのぞきこんでいる男の子が浮かんできます。
人家から少しはなれた、小さな山の裏側の、
生い茂った草の中で、ぽこぽこと水が湧き出ている小さな泉。
直径は一メートルくらいで、
でも、底はとても深い。
男の子は、半ズボンをはいて、顔も手も泥だらけ。
虫取り網みたいなものを持って、ひざもすりむいて、
でも黒く光る目でじっと水の中をみている。
季節は夏で、蝉のこえがあたりにわんわんと響き渡り、
でもそのものすごいうるささの中で、
その男の子だけは、
なんにも聞こえない真剣さで泉をのぞきこんでいる。
このシーンはなんだろう?と思って、
ひさびさに本をめくってみたら、
これ、この本の一番最初の場面でした。
なんだあ。そっか。
でも、この場面が、
わたしのこの本の全体のイメージ。
だれかが、
「子供のころの一時間は、大人の一年にも、それ以上にも相当する。」
と言っていたけれど、
ほんとうにそうだなあと思います。
この本を読むときには、あの男の子の生きている、
その、濃いい時間の中へ、入ってゆくような気がする。
そして、その男の子に起こった、
とても不思議な出来事を、一緒に体験しにいくのです。
なぞ図書館司書 さんきち
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