さんきち なぞ図書館
しばらく仕事が忙しかったりして、
うちでごはんを作らない日々が続くと、
一体いままで私、ほんとに毎日自炊なんかしてたんだろうか?
とふしぎに思ってしまうくらい、
料理ってものが、簡単に遠くにいってしまいます。
久々にちゃんと時間ができて、
さて、今夜はおいしいものつくるぞおと意気込んでみても、
あれよあれよというまに、
スーパーの売り場で、立ちつくすはめに陥る。
やばい。なんにも思いつかない。
ならんでいる野菜たちを見ても、
どうもピンとくる調理方法が思い浮かばない。
大体、自分がなにかおいしものが作れる気がしないし、
仮につくれたとしても、
多大な時間がかかりそうだし、めんどくさいし。
こまったなあ。
でも、やっぱり、コンビニのごはんはなあ、
食べたくないなあ。おいしくないしなあ。
そんなとき、わたしはまず、
自分の「クイイジ」に訴えかけます。
私の「クイイジ」はたいへんに強力なので、
大抵、これがうまくいきます。
「 なにがつくれるかではない!
なにが食べたいかなのだ! 」
そう!そのとおり!
この言葉の効果は絶大です。
なぜなら、食べたいものは沢山浮かぶ。
食べたいものを、具体的に考えて、
食べたときのおいしさをリアルにつかんだ瞬間、
わたしは、料理を自分の手元にとりもどします。
なにかを食べたいと、
わたしに本気で思わせることができたらもう楽勝。
すでに、なにがなんでも作る気だし、
できるに決まってると思っているので、
絶対に、その一口を食べる到着点まで、
嵐のように連れて行ってくれます。
自分のことながら、ほんとに激しいクイイジです。
まるでクイイジに引っ張られて生きているようだ。
(あ、でもこれ、クイイジだけに限ったことではないかもしれません。
なにかを観たいとか聴きたいとか、
どこかに行きたいとかも強いもんなあ・・・。)
ということで、かくのごとく強力なクイイジ(他)を持ったわたくしが、
あ、この人、私を上回るクイイジの持ち主だ。
と半ば呆れながらも感心してしまった人の本を
今日はご紹介いたします。
『 魯山人の料理王国 』 北大路 魯山人著
文化出版局 1500円
さすが、クイイジが張ってるだけあって、
この人、自分でなんでもつくってみる。
それもちょっとやそっとじゃなく、
プロ並みにやったうえで得た知識だから、
ものすごく勉強になります。
こりゃあ、一朝一夕じゃできん。
しかも、料理の好みが私と似ていて、
目次みただけで、ちょっとひっくり返りそうになります。
それでは、その目次の一部をご紹介しましょう。
鮎の食い方
ふぐのこと
握り寿司の名人
うまい豆腐の話
椎茸の話
お米の話
山椒
塩鮭、塩鱒の茶漬け
小魚の干物の味
白菜のスープ煮
タクアン
鍋料理の話
デンマークのビール
ううむ。うまそうだなあ。
それにしても、
この人の職業、なんていうんだろう。
食研究家、食批評家?
とにかく、自分でつくるは、調べるは、食べに行くは、
文句つけるは、誉めちぎるは。
おまけに、料理のために、自分で食器までつくっちゃって、
(それがまたすごい品なのだけど)
食にかける気持ち、ものすごいものがあります。
それと、この人は、
ウンチクや、値段や、評判は、一切評価項目には入れず、
ただ自分の舌だけを頼りに判断をしている。
ああ、ただの、本物の、うまいもの好きなんだなあと感心します。
そろそろ秋だし、
季節問わずクイイジの張った方には、特にお勧めです。
あ〜あ。あんな目次を羅列してたら、
おなかすいちゃったよ。
それでは、また!
なぞ図書館司書 さんきち
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