やあやあ。なぞ図書館です。
先々週、休館してしまって、ごめんなさい。
その先々週、実はわたくし、
ホームステイに行っていたのです。
ホームステイといってもね、
鹿児島。
ホームステイとは、日本語で「民泊」といいます。
この民泊にもちょっと語弊がありますが、
この旅はちょっと普通の旅ではなかったもので、
あえてホームステイといいたい!
だって、ものすごいカルチャーショックを受けて帰ってきたのです。
鹿児島というと、九州のはしっこですが、
その鹿児島の、さらに南のはしっこに、
「根占町」という小さな町があります。
ここが今回の旅の目的地でした。
この旅がどんな旅だったかを一言でいうと、
「食いしん坊バンザイ!×100!」
といったところでしょうか。
よくテレビの旅行番組で、
芸能人が地元の漁師さんと一緒に漁に行って、
その場でさばいてもらったお刺身を食べるとか、
そういうの、やってるでしょ?
あれ、私もやってみたいなあって、
ずっと思っていたのです。
そうしたら、そういったことをやれるツアーがある!
というので、「わーい」と飛びついて、
参加したのでした。
実際行ってみたら!
それをやれるどころか!!!
わくわくと楽しみにしていたことの、
3倍はすごい体験をさせていただいた・・・という、
スペシャルなスペシャルな旅でした。
夜明け前に起きて、
きびなご漁の船を港で待ったり、
漁師さんの船に乗って、
養殖のカンパチの餌やりをみたり、
朝の散歩中の牛に出会ったり、
(朝の散歩は、肉がおいしくなるんだって)
霧の中、山の上の風力発電の根元にいったり、
岩場でたべきれないほどのサザエのバーベキュー、
ウエットスーツのおじさん、
「そこでとってきた」とイセエビを
両手に持って登場とか。
夜は親戚が集まって、芋焼酎をのんでの大宴会・・・。
ううむ。書ききれん。
・・・でもね、
この旅のメインは、どんなおいしい食べ物よりも、
どんなおどろきの場所よりも、
根占町の「人」でした。
同じ日本語を話していながら、
このちょっと手の届かない感じ。
なんだろう、この人たちの特別さは。
・・・と、会ったときからじわじわと感じていました。
これは、もう、なんとも言葉で説明はつかなくて、
ただ、そばにいて感じることしかできないのだけれど、
明らかに、なんといったらいいかなあ、
素朴で健康な空気が流れているのです。
表面にあらわれたことで言葉にできるのは、
根占町の人々の、
「無表情のときのうつくしさ」。
会う人会う人、
漁師さんやら、道で挨拶をするおばあさんやら、
役場のひとも、若い人たちも、
無表情のうつくしいこと。
(へんなほめ方!)
東京の満員電車に揺られていると、
げっそりと疲れ果て、苦しそうな、
つらそうな人たちの顔がたくさんあります。
もちろんわたしも、その一人で。
たまに、電車の窓に映った自分の
切羽詰った顔にびっくりすることがあります。
なにが、そんなにつらいんだろう。
なんだろう?
つらそうな顔の電車の中の人たちも、
誰かと話すときには、きっと笑顔になる。
でも、笑っていないときの、ふつうの顔、
その無意識のときの表情には、
隠すことのできない、その人のほんとうの心の状態が
あらわれてくるのだと思います。
根占町の人々のような、
ああいう顔の人がたくさんいる町、
それがよい町だということは、すぐわかります。
あの顔のためには、
小手先など、何の役にもたたない。
心をどうにかしなければなりません。
そうやって、羽田から帰るバスの中、
ずっと「無表情のうつくしさ」について考えていたら、
アラスカを撮った写真家、
星野道夫のことを思い出しました。
星野道夫という人の撮った動物は、
とても美しいのです。
鹿や、鷹や、熊や、ふくろうや、あざらし。
動物は、笑わないけれど、
厳しい自然の中、遠くを見つめる顔は、
はっとするほど、気高く、崇高にみえます。
「長い旅の途上」 文春文庫 星野道夫著 676円
星野道夫は6年前、カムチャッカで撮影中、
熊に襲われて亡くなりました。
それはとても惜しまれた死だったけれど、
でも、たくさんのエッセイと、写真を残してくれました。
この人の書くエッセイ、この人の撮る写真をみると、
この人はきっと、
どんなにか無表情がうつくしかったろうと思えます。
(やっぱり変なほめ方だなあ)
人は自分が始終思っている方向にいけるんだとしたら、
この本は、たまに読んでおきたいなあと思うような本です。
ねむいねむい。それでは、また。
なぞ図書館司書 さんきち
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