第18回 歯 の「ハナシ」【其の四】
一週お休みをして
ちょっとブレイクを入れたつもりなのに
暑中をお見舞いするどころか
「やいのやいの見舞い」が届いたので、
ちゃんと書くことにします。

さて、今回は、ちょっと間が空きましたがサカシタニホンコンが北京にて治療を受けた話をば。

中国の田舎町で治療を受けたニホンコンにとってみれば、
北京なんて日本かと思うほど、医療技術は発達してるわけなんですよ。

ま、地獄を見ると、底辺が高く見えるという錯覚から来てるものだと思うが。

とにかく、北京での歯医者通いなんてものは、「余裕」の一言でしたね。

その北京の病院てのは、前回もお話した通り、SARS騒ぎで、
患者数をごまかしただの云々だのという、例の病院です。
具体名はあげませんが、当時からかなりの大病院で、
歯科、内科、外科諸々そろっていて、それはそれは立派なところでした。

サカシタニホンコンは、中国人のお友達に聞いて、そこを教えてもらったのね。
なにしろ、大学に一番近くて、かつ設備がいいって評判の病院なのだから。

行ってみたけど、ま、田舎町でいったところよりも、
100倍はよかったと思う。コップが確か使い捨てだったのには感動したね。
日本では当たりまえなんだけど、そんなことにいちいち感動してみる。

ここからが、疑惑の始まりなのですよ。
疑惑というよりかは、事件が明るみにでてしまっても、しゃーないというか。

なぜかって。

サカシタニホンコンが行った時がそうなんですが

治療費を1回ごとに取らないんですわ。これが。
おかしいでしょ、絶対。
しかも、結論からいうと「その治療費もなんとかしようとすれば、なんとかなる」という曖昧なもの。

治療費の請求は、終わってから、「はい、いくら」とか言われるわけ。

ニホンコンも、変なサル智恵がついたか
「このまましらばっくれて、治療費払わずに終了させてしまえ」とか思ったもん。

甘かったけどね。

幸い2回くらいで治療は終わったのだが、以下医者とのやりとり

医「さて、これで治療は終わりね、で、精算なのですが、
全部で60元(当時の900円くらい)」と。

サ「な、なんだと〜!!」(た、高い)

確かにそのはず、中国の田舎町では、1回の治療で神経を抜いて詰め物までしてもらったので、
たった10元(150円)なのだから。

サカシタニホンコン、考える。
これは、払えん、ではなく「払わん」体制で挑む。

1、とりあえず、怒ってみる

サ「なによ!毎回精算してくれないのに、最後にボンってだされても困るのよ!
それになによ!この金額!高いじゃないのよ!」

医「チガイマス、ソウデハナクテ、1回目ガ30元(450円)、
2回目ガ30元(450円)。ヨッテ、計60元(900円)ニナルノデス」


く、くそー
明瞭会計だったか。

ニホンコン、怒ってもダメということがわかり

2、泣いてみる。

サ「そんな〜、だって他の町で治療したときには、もっと安くすんだから、
このくらいが中国の相場だと思って来たんです、ワタシ日本人といっても、
学生で来ているから、全然お金はないんです。
まさか異国の地で虫歯にかかって辛い思いをするとは思ってもいなかったし。。。」

演技、というのも、もちろんあるが、あの時は本当に辛くて、本当に涙が出てきた。

外国の地で、何がどのくらいの金額の目安や、相場が全然分からない中、
一人で生きていかなくてはいけなかったし、いつもつきまとう「外国人」
という存在ゆえに、毎日「ぼったくられてんじゃないか」という疑いの目で
いろんなものを見なくてはいけなかったし。

そんな生活に、かなり疲れていたのかもしれない。

したら、そのお医者さんが次にでた行動とは

「クシャクシャッ、ポイッ」
なんと!
迷った挙げ句、一枚の明細をクシャクシャに丸めて、捨ててしまったのだ。

医「ワカッタ、ワカッタ、モウ泣カナイデ、1回目ノ領収書ハ捨テテアゲルカラ、
ノコリの30元ダケ ハラッテクダサイ」

と。

サカシタニホンコン、涙しながらも、びっくりする。
こ、こんな医者いいのか、と。こちらサイドにしてみりゃ
「ラッキー」とほくそ笑むところだが。

なんだか、とても優しいドクターに出会えたのか、サカシタニホンコンが泣き落としたのか、
結論はよく分からないのだが、とにかく勝負にたとえるなら、こちらに軍配があがったわけだ。

こうして、ニホンコンは歯をキレイに治して日本に帰国したわけだ。
で、数年後の今年、SARSのニュースを見た。



そんなイチ患者の治療費を涙一つで捨ててしまうような病院だから、
患者数をごまかすくらい、してしまうのかもしれない。

裏でどんな人間模様があったかは分からないが、察するに
多分、相当大御所が涙したと思うが。

人情の世界、偉大なるチャイナの医療状況でありました。

この後「泣き落とせばなんとかなる」精神が骨身にしみこんだサカシタニホンコンは。
東京に住み着いてからも、ディスカウントの効かない国、
ニッポンで「タクシー」という分野に目を付け、日々料金交渉にいそしんでいるのでありました。

例)
「運転手さん〜ごめんなさい〜10円玉が全然ないんですう〜
1230円は1200円で〜、お願いします〜」

と、「半端は切る」精神でタクシーの運転手さんとやり合っているのである。

向こうの出方はマチマチで、「ま、仕方ないっか」と許してくれる人もいれば、
冷たく「1マンエンありますか?」と突き放されるパターンに二分される。

大陸的だよな〜と思いながら今日も東京の街で奮闘しているのであります。

(8月5日 サカシタニホンコン)


追記:
今後の話なのですが、サカシタニホンコンは、中国ネタばかりではないのですね。
ニホンコンのおったまげる過去の記憶をひも解くのも面白いのですが、
今目の前で起こっていることや、考えていることも、個人的には十分気になるので。

時には読んでいて興味ない!って思うこともあるのかもしれませんが、
末永くおつきあいあれ。



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