エッセイなど軽い読物が続いたので、
ここいらでちょっと、
ジェットコースターにのるように、
急流に飲みこまれるように、
物語に、ぎゅううううううっと引きずり込まれて、
ごおごお振りまわされてしまう本をご紹介します。
水からあがるようにバッと本から顔をあげて、
しばらく息をついていないと
現実に戻ってこれないようなやつをね。
「ゲド戦記1 影との戦い」
ル=グウィン著 岩波書店 \1,600
力のある作品って、ごくたまに出会います。
読み終えたとき、本がずっしり重く感じるような。
この本は、まさにそういった本で、
ひさびさに読んでみて、またしても、
まいった!と思いました。
ふう、たまげるなあ、まったく。
けれども。
私が「ゲド戦記」を知ってから、ちゃんと読んでみるまでには、
かなりの時間がかかったのです。
だってさ・・・、
とっつきにくいんだもん、タイトル。
ゲドとか、戦記とかさ。
しかも表紙もあれ。↓
どうよ?
「おもしろそう!」だなんて、微塵も感じられない・・・。
ふう。でもねえ。
それはそれはすごい本なのでした。
その存在を知ったときから、うすら気付いていたんだけどさ、
なんか気が乗らなかったの。
だって、しつこいようだがあの表紙だよ?
この本の存在を知ったのは、
宮崎駿のインタビューだか対談だかでした。
子供のころのことなのでよく覚えていないのだけれど、
「風の谷のナウシカ」の話になると、
しょっちゅう「ゲド戦記」という本の名前が出てきていたのは記憶していて、
「原作かなんかなんだろうな・・」
とぼんやり思っていたのでした。
2年くらい前かな。
いいかげん読んでみようと思って、はじめて手にし、
びびった。
なんていうんだろ。
力がある。
読んでみて思ったのは、
「これは、ナウシカの原作とかいう問題じゃないな」
ということ。
(もちろん、舞台はとてもナウシカにちかいのだけれども。)
「ゲド戦記」は宮崎駿の心に深く根付いているらしく、
この本の影響が感じられるような感覚は、
ナウシカだけではなくて、
「もののけ姫」にも「千と千尋の神隠し」にもでてくる。
人の体験はどんなものも、体験してしまったら
すべて胃に入って胃液で溶かされ、
いいもわるいも必要で吸収して
ゆっくりその人の血となり肉となってゆくと思うのだけれど、
「ゲド戦記」は宮崎駿にとって、
相当大きな体験だったのではないかしら。
それは私も同様で。
この本の結末を読んで認識したことが、
しばらく前に、精神年齢が18歳から28歳に
ふっとあがった要因のひとつだろうなと思います。
大人ってすばらしい。
(すっごいブーイングが聞えてきそう。たすけてー。)
ナウシカの漫画の原作を読んで、
ほほうと思った人には特におすすめ。
あれを「ナウシカ戦記」だとしたら、
「ゲド戦記」は、ゲドという男の子の、
戦いの記。
おっもしろいよー。
そんでは。
なぞ図書館司書 さんきち