第14回
歯 の「ハナシ」【其の壱】
6月はムシ歯月間だった(ような気がする)。
毎年この季節になると、小学校の頃、鼻毛の長い先生が歯の検診に来ていたのを覚えている。
先生が「CマルBマルなんとかなんとか」って言ってるのに、
鼻毛しか見えなかったのが、強烈な印象として残っている。
サカシタニホンコンは、いたく歯が悪い。
持って生まれた歯の弱さもあるが、びっくりするほどの歯並びの悪さから、
磨き残しがどうしてもでてくるらしい。
昔は恥ずかしかったのね
先生が「じゃあ、出席番号順に歯の治療本数を言います1番○○さん2本、
2番○○さん1本、、、」そしていつもこうなのだ
「坂下さん12本」
一瞬クラス中が「マジで?」という空気に包まれるのを、いつも感じていた。
歯が悪くて、何が困るって。
「外国で保険が効かない」こと。
それにつきる。
北京留学を決めてから、1年かけて歯医者に通い、全ての虫歯を治療した筈なのに
留学して半年たったある日、激痛が走った。
虫歯暦が長いニホンコンは、一瞬で分かった
「神経を抜かなくちゃいかんほどの痛みだ」ということを
北京でこうなった際の選択肢はただ3つ
1、 針を変えないので危ないと有名な、現地の歯医者さんに行く
2、 ちょっとお高いけど安心の、北京にある外国の歯医者さんに行く
3、 日本に帰国して、歯の治療をする
どれもヤだね、正直。
ただ、初回ということで、安全をとって2にしてみた。
赴いた歯医者は、諸事情により控えさせていただくが、外資系のキレイな歯医者さんだった。
まずは、レントゲンを撮る
そして、詰め物をあけてみる
「はい、神経がやられてますね、次回取りましょう」
治療時間、約15分。
読みが当たったという安堵は、次の一瞬で奈落の底に落とされた
「ミス サカシータ 800US ダラーズ」
「は?」
今でもその瞬間を覚えているが、つまりこうなのだ。
「レントゲンをとって、詰め物をとってみて、神経がやられていると判明。
次回とるので、今日の治療代は800USドル(当時8万円)払いなさい」
ありえない。
歯医者になれているので、だいたいこれがいくらかかるかは見当がつく。
しかも、それが国民健康保険の3割だったとしても、
満額でどのくらいかを、はるかにこえた金額だ。
以下、やりとり再現
ニホンコン「払えません」
ま。そうだわな。
歯医者「駄目です」
ま。これもそうだわな。
歯医者「クレジットカードでもいいです」
ニホンコン「持ってません」
ホントに持ってなかったのね。
こんな押し問答が続き、どうにもこうにも決着がつかないのでニホンコン、
「とりあえず、今日は手持ちで100ドルしか持っていないので」と、払ってきた。
だって、1回100ドルくらいで済むと思っていたから。
1万円払えば、相当な治療は受けられるだろ、普通。
以上。
これが、8年前の話。
その後どうしたかって。
その後ニホンコンは、2ヶ月間長旅にでて、戻ってきてからは寮を引っ越しし、
カルテに書いたであろう、電話番号も変わり、行方をくらましたというよりか、「
行方がくらまった」というのが正しいかも。
あの治療には、保険が効かなかったという理由もいれて、
100ドル程度の価値だろう。払えないものは、払えん。
1ヶ月2万円くらいで暮らしていた当時、8万円はさすがに払えなかった。
今、いきなり歯医者で1回の治療費が100万と言われた日のことを考えてほしい。
私が極悪な患者なのか、ヤクザな歯医者なのか、判断は読者のみなさんにお任せする。
「ハナシ」は長くなりそなので、次回に持ち越すとする。
だって、まだ、詰め物を取って、レントゲンを取っただけなのだから。
中国での歯との戦いは、まだまだ続く。
7月8日 サカシタニホンコン