夜、外で猫の声が聞えると、
すばやくテレビと部屋の電気を消します。
そして、暗闇のなか、そろそろと窓に近づいて、
声の主がどこにいるのかこっそり覗います。
ひとり暮らしを始めて気づいたのは、
猫が恋しくて恋しくて。ということでした。(加えておばあちゃんも)
『猫語の教科書』ポール・ギャリコ著 ちくま文庫 \580
猫語の教科書?
猫嫌いの人は、なんのこっちゃと思うかもしれませんが、
この本は、猫好きはもちろんのこと、
女好きにもOKな本です。(オンナズキ!)
だって、ここに登場するメス猫は、猫っていうよりも「女」なんだもん。
それも、とても魅力的な。読んだらね、ちょっと恋をしてしまうかもしれないよ。
(わたしはしてしまいました)
ある日玄関先に、
間違いだらけのワープロ打ちの原稿が、
ポツンと置いてあったところからこの本は始まります。
拾い上げたご主人は、意味のわからないその文章に、
最初は単なるいたずらかと思うのだけれど、
よーく読みこんでみると、ワープロで目的の1文字を打つのに、
まわりの文字も一緒に打ってしまっているのだ
ということに気付きます。
暗号を解くように、無駄打ちをしているそれらをはぶくと、
そこには、こんな文章が。
「まだほんの子猫のとき、母を亡くすという不幸にあって、私は生後六週間で、
この世にたったひとり放りだされてしまいました。
でも、悲嘆にくれたわけではありません。
だって私は頭もいいし、顔だって悪くないし、気力にあふれ、自信もあったんですもの。」
ようするに、猫の手でうったから、
まわりの文字も一緒に押されてしまってたというわけ。
ふふふ。ちょっとふざけているでしょ。
そのメス猫の、<人間をモノにするための手練手管>
がここから語られてゆくんだけど、それはもう、人間どうのこうのってより、
男をモノにするための手練手管・・・って言った方がよいくらい。
うちの実家で飼っている猫は、オスだけれど、
あの身のこなしといい、あのまなざしといい、
ちょっと女にしかみえないなあと、
まじまじ観察してしまったよ。
たとえばわらっちゃったのは・・・
「けっして(くりかえしますけど)けっして、
男性をおだててモノにする方法を、奥さんに使ってはダメ。
うまくいくはずがないんだもの。
なぜなら、奥さんは前から猫と同じ方法で、
ご主人をあやつっているからです。」
なんてね。
人間を愛していながらからかっているような、
ちょっとしゃれたかんじの本です。
休日の、昼間っから飲むビールのお伴にぴったり。
ほろよい気分で、メス猫に恋でもしてみてはいかが?
なぞ図書館司書 さんきち