其の2 「アメリカン・ビュ−ティ−」

家の近所に行列のできるステーキ屋があるんです。量が多くて有名なんです。そう、喰ってきました。極厚ステーキ&和牛ハンバーグ&特大海老フライのセット。

いやぁ喰いごたえ抜群!周りはカップルや友達連ればかりの満員の店内で、一人で肉を喰う!ただひたすらに喰う!!F.A.Tな私を満足させるとはなかなかのボリューム。

これで1580円は安い!しかもOEC!

実に満足して、食後にコーヒーを啜っていると、ふと思うわけです。
「アメリカ人はこんなもん毎日喰ってりゃ、そりゃ成人病になるわ。」

・・・はい。偏見です。毎日は喰って無いでしょう。ミートローフとか好きだもんね、

アメリカさんも。だからってハンバーガーで太った事訴えるのはやり過ぎだと思うけどね。ファットな日本人代表として思います。私は私の体型に責任と愛着を持ち、自信を持って、声を大にして謳いたい!F.A.T万歳!!・・・・万歳!!(半泣き)

でもやっぱりステーキなんか喰うと考えるわけです。アメリカの事。
そこで今日はこの1本。


「アメリカン・ビューティー」1999年アメリカ

監督:サム・メンデス
主演:ケビン・スペイシー
製作会社:ドリームワークス


アメリカ人の美意識。
最近はまた世界からその意識に?マークを突き付けられているが、その感覚をユーモアと皮肉たっぷりに描いている本作は、いろいろな意味で日本人にも興味深く、我々も同じような意識になりつつある事への警鐘のようにも思われる。

アカデミー賞を5部門もとっている作品なので御存じの方も多いと思う。アカデミー賞というのも色々な問題が渦巻いているので、アカデミー作品だから面白いか?といえば、一概には言えないがそうで無い事もしばしば。

ただこの作品は違う。アメリカの中流家庭の抱える憂い、悲しみ、問題が実に上手に表現されていて、映像的にも非常に美しく構成されている。

タイトルの「アメリカンビューティー」は劇中にポイントの場面で登場する深紅のバラの品種名でもあり、直訳の”アメリカの美”とのダブルミーニングになっている。

リストラ候補のダメ中年で、娘の友達に欲情してしまうダメおやじにケビンスペイシー。ダメ夫に嫌気をさして、自分はできる女だという裏付けの無い自負の元、出来る男との浮気に逃避してしまうダメ妻にアネットベニング。そんな両親の元で見事に愚れていく典型的ティーンネイジャーにソーラバーチ。自分のセックスアピールがその存在のすべてであり、それを否定される事を恐れる余りに周りに牙をむく少女にミーナスパーリ。

個性的なキャストが、実に上手い事ダメっぷりを表現し、それぞれの抱える問題と美意識を巧みにあぶり出していく。

アメリカならではの社会問題も含まれている。近所にいるゲイのカップルに放送禁止用語を連発する極右の軍人の隣の親父。ビデオマニアな軍人の息子は、自分の小遣いを麻薬で稼ぐ。不動産のやり手営業マンのストレス発散は、大口径の銃をぶっぱなすこと。

・・・病んでます。世界は。

ただ救いの無いこの世界を救いなく描くのでは無く、美しい映像をおりまぜてユニークの影に皮肉をちりばめるところは、さすが!ドリームワークス!!スピルバーグが裏で手をまわしてるだけある。

ヨーロッパ各紙でも絶賛され、アメリカを理解するためにもっとも分かりやすく、すばらしい教科書だと、フランスの誰かが書いてました。確かにそうかも。

さて日本人の私としましてはもっとも印象に残った1シーンがありました。

ビデオマニアの麻薬の売人である隣の息子が、部屋で娘とピロートークしている時に出てくる、ただ普通の歩道でビニール袋がつむじ風に舞うビデオ映像を見せるシーン。

「あまりの美しさにビデオをまわしてしまった。」
と語るその映像世界は、まさに日本のわび・さびの心。

世の儚さを憂い、美しきを愛でるその感性は
「年々歳々花相似 歳々年々人不同」という漢詩に表現される世界にも似て、ああアメリカにもこういう感情表現はあるんだなぁと感動して、思わず見入ってしまう。


戦争だ!ブッシュだ!!イラク解放だ!世界平和だ!!と叫んでみても、所詮は同じ人間。最後は同じところに行き着くのかもね。こういう感情をみんなで共有できれば争いなんて起こらないのかも。・・・そんな甘くはないか。


さて次回はジャパニーズ・ビューティーについて考えてみよう。