こんばんは。なぞ図書館です。
最近東京ではつよい風がびゅうびゅう吹いています。
わたしの部屋は、ふるい家の二階の屋根の上なので、
風でぐらぐら揺れています。
私の部屋だけぽろっととれちゃったらどうしよう。
この風は、春一番なのかな。
春一番だといいなあ。
さてさて、なぞ図書館なぞ図書館。
きょうは、シャーロックホームズです。

「緋色の研究 改版」 (ひいろのけんきゅう) コナン・ドイル著 新潮文庫 \362

シャーロックホームズというのはどうも、
名前は知っていても、本はよんだことがないという人が多いらしいです。
あと、子供向けと思ってる人と。
私はシャーロキアンとまでいかないけれども、(シャーロックホームズマニアをこうよぶらしい)長年、風邪でお休みしたときにお世話になっている手前もあり、今回なぞ図書館の蔵書に加えることにしました。

で、「シャーロックホームズの本」とひとくちで言っても、
文庫本にして五、六冊でているので、ううむどれを紹介しようかなとしばし考えてみたところ、この「緋色の研究」が最適だろうと結論しました。理由はといいますと、この「緋色の研究」が、ホームズシリーズの最初の一冊だからです。
なんて簡単なと言うなかれ。

作者も最初の一冊ということで、ホームズという変人をどう読者にインパクトを持って紹介しようかと、相当苦心している様子。
それは、ちょっとおおげさすぎるきらいがあるくらい。
あまりに変人すぎるので、最初、相棒のワトソンはひいています。
でもきっと、はじめて読む人にとっては、
このくらいの方がホームズのキャラがわかりやすいと思うのです。

ホームズの本の何が面白いかというと、なんだろうなあ。
霧のロンドンの匂いがします。

それも、石畳を馬車がせわしく行き交う昔のロンドン。
そこには、出掛けるときはシルクハットをかぶる男の人と、
ドレスを地面に擦りながらあるく女の人たちがいて、
小さなベーカー街の一室に、あわてふためいて事件をもちこんでくるのです。
暖炉のあるあたたかい部屋に通されて、
「まあ、おちついて」とホットウィスキーを飲まされて、
「さて、それでは、おはなしをうかがいましょうか」となるわけです。

風邪をひいているわたくしは、ここらでぎゅうううっと、
霧のロンドンに入っていきます。

ベーカー街の部屋では、獲物をみつけた猟犬のように、この事件にとびつこうとしているホームズがいて、困り果てた人々の口からは、さすがホームズに助けを求めにくるだけある、意味のわからない奇妙なできごとが語られます。

そうだ、ホームズは話を聞く前に、まず鋭い観察で、依頼人の職業、性格、趣味まで当て、彼らをおどろかせます。
「事前に私のことを調べ上げていたな!」と食って掛かる人もなかにはいます。
やがて、このするどい目にとまった小さな「発見」の数々が、明晰な頭脳に分析され、目の前にあった「意味不明な出来事」が、ぐんぐん「意味のある出来事」に変わってゆくのです。
その推理の過程のなんとみごとなこと。

ふうとためいきがでてしまいます。
なんだかまた、読みたくなってきちゃったな。
犯人なんて全部記憶してるのに、風邪をひくたびにホームズを取り出すのは、こういうわけです。

しかし、あの人はどんな人でどんな職業の人だろうって、
電車の中でホームズごっこをしていた女の子は、いつか大人になったとき、夫にとってはおそろしい妻になるんじゃないかな。浮気はまずみつかっちゃいます。
お気をつけ下さい。

それでは、また。

なぞ図書館司書 さんきち