はじめまして。なぞ図書館です。 たまに、ふと思いついたおすすめの本を紹介していきますね。 いきますね。いきますね。 さて、きょうは、冬の夜におすすめの本を紹介します。 「一千一秒物語」 稲垣足穂 新潮文庫552円(税別) なんで「冬の夜に」かというと、なんとなくこの本の中の空気が、キンと冷たい感じがするからです。 この本を人に勧められてはじめて読んだときは、ちょっとびっくりしました。 他にこんな種類の、奇妙な世界をみたことがなかったからね。 この作者、相当変わり者だよ。 他に類をみないから、どう説明していいものやら困るのだけれど、 なんというか、へんなおかしさがあるのです。 おかしさって、ストレンジもあるけど、ファニーの方。 あ、でもストレンジだから、ファニーなのかもしれないな。 「変だから笑っちゃう」 それそれ。それだ。まさに、そんな感じの本です。 私ね、この本を読んでると、いつもニヤニヤしちゃうんだ。 だって、ものすごく理不尽なことが起こりまくるんだけど、 その中で、主人公が、いたって真面目な顔で、真剣に対応しているんだもん。 すべてが奇妙な世界の中で、そこにはそこの、ふつうの常識があるの。 それとね、これは、なんだか綺麗な本です。 装丁が、じゃなくて中身がね。 硬質なカチンと音のしそうな美しさというか。 星とね、月と、ピストルがやたらでてくるの。 そんで主人公は、たいていだれかとケンカしてるんだ。 へんでしょ。でもどうしてか綺麗なんだよ。 ひとことで言うと、「シュールでロマンティックな短編集」って感じかな。 あ、短編集です。すごい短編。3行くらいのもたくさんある。 だから、あっという間に読めると思うよ。 この変わり者の作者、稲垣足穂(イナガキ・タルホ)という人は、 こうみえても男で、けっこう前に死んでいます。 「あとがき」を読んでみたら、もし今生きているとしたら102歳だった。 だからまあ昔の人なんだけど、この独特な個性はいま読んでもとても新鮮なんだ。 たばこのことシガレットって言ったり、映画のことムーヴィって言ったりするのが、 クラシックなのか?モダンなのか? よくわからんけど、ダンディ。 私は、この本を読んでから、 月がちょっとかわった色をしていたり、大きくみえたりするときに、 ふと、「稲垣足穂みたいな月だな」と思ったりすることがあるよ。 そんな本。 それでは、もし気がむいたら読んでみて。 またなにか思いついたらご案内するね。 ばああい。 なぞ図書館司書:さんきち |
||
![]() |